作品集『子どもたちの遺言』に刺激を受けたからです。
ゆびきりげんまん うそついて
きみはさっさと およめさん
ぼくもさっさと おむこさん
どちらがわるいと いうでなく
またのごえんを おたのしみ
知ってるのよ お父さん毎日パチンコ屋にいるじゃない
働いているの お母さんだけじゃない
弟に妹 一体何人いるのさ
季節外れのセーター着てさ いつもシミだらけのスカートはいてさ
いつも ごめんとか言わないくせに
どうして 私の心配なんかすんのよ
ただそこで転んだだけよ あなた離れていたじゃない
いやだ
涙が出てきちゃった
線をいっぽん引きました 私とあなたをつなぐひも
星を夜空に描きまして 月夜の晩のデートです
三角まなこでけんかして まあーるいケーキで仲直り
四角い箱を組み立てて そこにハートを収めたら
これが私の贈り物
公園で泣いている声が聞こえる 私だったかも知れない
迷子のアナウンスが聞こえる 私だったかも知れない
物乞いをしている子がいる 私だったかも知れない
大人になるために刃物で傷を負わされる子がいる 私だったかも知れない
銃を手にして煙草を吸う子がいる 私だったかも知れない
兵隊に石を投げている子がいる 私だったかも知れない
ご飯をたべさせてもらえなくて死んだ子がいる 私だったかも知れない
ぶたれて蹴られて押し込められて死んだ子がいる 私だったかも知れない
私だったかも知れない この国にいなければ
私だったかも知れない この時代にいなければ
私だったかも知れない お父さんとお母さんの子でなければ
だから私は目を大きく見開き 世の中のことを世界のことを 知らなくてはならないと思う
私が私だったから
日が暮れるまで遊んだら お家に帰ります
おうちに帰れば ご飯があります
ご飯が済んだら お風呂があります
お風呂が済んだら 着替えがあります
着替えが済んだら お布団があります
お布団に入ったら 「お休みなさい」があります
それがどこでも 当たり前のことだと 思っていました
テレビの ニュースを見るまでは
ごめんね 素直な自分じゃなくて
いやを いやと言えなくて
好きを 好きと言えなくて
悪いを 悪いと言えなくて
怖いを 怖いと言えなくて
痛いを 痛いと言えなくて
やめてを やめてと言えなくて
死にたくないを 死にたくないと言えなくて
さようならを さようならと言えなくて
ありがとうを ありがとうと言えなくて
お父さんが私をぶつと お母さんが 私にそっと 「ごめんね」 といいます
私がぶたれても 妹とお兄ちゃんはぶたれません
お母さん ごめんね
ぼくもらったよ 命を
おかあさんがいて おとうさんがいるよ
命をもらうことが 生きるってことが どんなにすばらしいかを ぼくは知っている
それは多分 ぼくが誰かの命を受け継いで 今ここいるのだから
息をして 何かに触って 光と音を感じて 食べて 飲んで 歩いたり
そして 跳んだり跳ねたりも できるかも知れない
どうか ぼくを祝福してください
どうか ぼくを新しい世界に 引き出してください
どうか ぼくに命を授けたことで 思い悩まないでください