アレクサンダ と ぜんまいねずみ
作・絵: レオ・レオニ
訳: 谷川 俊太郎
出版社: 好学社
「ぼくは・・・・・」 アレクサンダは いいかけて やめた。
そして とつぜん いった。「とかげよ とかげ、ウィリーを
ぼくみたいな ねずみに かえてくれる?」
とかげは まばたきした。 めもくらむような ひかり。
そして すべてが しーんと しずまりかえった。
むらさきの こいしは きえて いた。
ネズミのアレクサンダを見ると人間は、悲鳴を上げたり彼を追いかけたりしました。
しかし彼は、ほんの少しのパン屑が欲しかっただけなのです。
ある夜、アレクサンダはその家の子供の部屋で、ウィリーというぜんまいで動くオモチャのネズミと出会いました。
ウィリーは人間にぜんまいを巻いてもらわないと動きませんが、アレクサンダはウィリーを好きになり、誰もいない時に彼と話をしたりして楽しい時間を過ごしました。
アレクサンダは、ウィリーが人間から可愛がられて大事にされていることを知ると、人間から嫌われている自分が悲しくなりました。
ある日、アレクサンダは、ウィリーから不思議な話を聞かせてもらいました。
生き物を他の生き物に変えることのできる魔法のとかげが庭にいると言うのです。
アレクサンダは、そのとかげの魔法で自分を人間にかわいがられるウィリーと同じぜんまいネズミにかえてもらおうと思いました。
アレクサンダは、ウィリーから聞いた場所でとかげを見つけて願いを言いましたが、とかげはアレクサンダに月がまんまるの時に紫の小石を持ってくるよう言いました。
それを聞いたアレクサンダは、くる日もくる日も紫の小石を探しましたが、見つかりません。
疲れ果てて家に戻った彼は、捨てられてしまう箱の中に他の古いオモチャと一緒のウィリーを見つけてびっくりしました。
その家の子供の誕生パーティの日にみんながプレゼントを持ってきたので、ウィリーのような古いオモチャは捨てられることになったのです。
アレクサンダがウィリーの不幸を嘆いたその時、偶然にも彼の捜していた小石が目に入りました。
アレクサンダは、その小石をしっかり抱いて、庭のとかげのもとへ走ります。
呼びかけて出てきたとかげに、アレクサンダは前から思っていた願いを言おうとしましたが止めました。
そして次にこう言ったのです。
「とかげよ とかげ、ウィリーを ぼくみたいな ねずみに かえてくれる?」
レオ=レオニの画風はご記憶にあるでしょうか?
貼り絵による技法がデザイン性に富んでいて実にスタティックですが、ストーリーは実にダイナミックでドラマチックです。
アレクサンダが、友達のぜんまいネズミのために魔法を使った時は、涙が出ました。
友達の苦難に対して、私たちはアレクサンダのように、友人のためにしてあげられるでしょうか?
レオ=レオニの作品がもうひとつ手元にありました。
これも友人をテーマにしたものだと思いますが、次の機会にご紹介したいと思います。