ちいさな あなたに
作: アリスン・マギー
絵: ピーター・レイノルズ
訳: なかがわちひろ
出版社: 主婦の友社
税込価格: \1,050
(本体価格:\1,000)
発行日: 2008年03月
*あのひ、わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ、その いっぽん いっぽんに キスを した。
お話は、母親が産まれたばかりの赤ちゃんに、キスをしているところから始まります。
母親は、赤ちゃんの時は娘に溢れるばかりの愛を注ぎ、少女の頃はその成長をそっと後押しします。
そして若者になると、遠くから見守るようになりますが、大人になれば独り立ちして母の元から旅立っていきます。
帰ってきた娘が、目の前で孫娘の髪をとかす姿は、かつての彼女の姿でした。
娘の髪が銀色に輝く頃、彼女はもう娘の傍にいないでしょう。
年老いた娘がまどろむ揺り椅子の傍らのテーブルには、産まれたばかりの赤ちゃんにキスをする母親の写真が置いてあります。
この写真は、母子の絆の証しであり形見でもあるのでしょう。
*わたしの いとしいこ。
*そのときには、どうか わたしの ことを おもいだして。
この絵本は、見開きで19枚の画面からなります。
このうち、赤ちゃんから子供時代までのシーンは5つであって、一番多くを占めていたのは9つのシーンからなる娘の青春時代です。
但し、その青春時代の描き方は、必ずしも明るいものばかりではありません。
それでも母親は娘を信じ、遠くから励ましつつ娘を見守っていたのです。
では果たして男親が、自分の娘をこの母親のように見守れるものでしょうか?
実際はそうだとしても、男親としての心情をこの絵本のように綴れるものでしょうか?
この本の帯にはこう書いてありました。
*「すべてのおかあさんと その子どもたちに」
しかしこの絵本は、「全てのお母さんとその娘たち」に贈られた本だと思います。
母親が自分の分身のように娘を愛し、時に遠くから見守るからこそ、青春時代を歪ませることなく過ごせたのだと私は思います。
もちろん父親も、子供たちがよりあるべき形で青春時代を過ごすことを見届け、時に子供たちを助ける立場にあります。
しかし、娘を本当の意味で独立した人間として、また将来母となる女として育てることは、母親にしか出来ないことだと私は思うのです。
この絵本を読んだ後で、妻と娘たちの間に繋がった糸が見えたような気がします。
それは多分、私と妻を結ぶ糸より太くはっきりとしたものなのでしょう。
ではいつか娘たちと繋がる糸は、私にも見えるのでしょうか?
「ちいさな あなたに」
もしこの男親編があるなら、私は是非とも読みたいと願っています。
最後になりましたが、以前このブログで紹介した「
ラヴ・ユー・フォーエバー」のレビューへのリンクを貼っておきましょう。
ともに母親の心情を現した作品ですので、併せてご覧いただきたいのです。
母親とは、ただそれだけで素晴らしい存在だと思うのは、私ばかりでしょうか?