安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

中村紀洋が教えてくれたこと

2007-11-03 21:39:24 | 芸能・スポーツ
続いてはノリこと中村紀洋選手のことについて。

中村紀洋選手は結果を出す代わりに自己主張もきちんとする「有言実行」タイプである。時には不調で結果が伴わないこともあるが、今まで実力で道を切り開いてきた。
オリックス時代の晩年は結果が伴わないのに自己主張をし過ぎた側面はあったかもしれない。が、それにしても中村をまるで役に立たなくなったボロ雑巾のように放り出すオリックスのあの仕打ちはひどいではないか。

昨年のシーズン終了から「たった1人のキャンプイン」に至るまでの期間、世間が中村バッシング一色だった時期も、へそ曲がりの私はずっとそう思っていた。
中村を自由契約(解雇)にするだけならまだしも、日本球界をとっくにお払い箱になったはずのローズを大枚はたいて再来日させるに及んでは、いったいこの球団のフロントは何を考えているのかと全力でいぶかしんだものだが、やがて私は理解した。「この球団は能力のある者よりも従順な者を求めているのだ」と。
実力はあってもつべこべ言う奴はいらない。経営者の言うことに唯々諾々と従う者がいればいい…それがこの球団のやり方なのだということに気づいたのである。

それを理解した瞬間、私は「こんなフロントの下で選手にやる気など起きるはずがない」と思い、大胆にもオリックスの最下位を予想した。そして結果その通りになった。

オリックスの宮内オーナーといえば、小泉政権下で規制改革・民間開放推進会議の議長を務め、労働法制改革など規制改革を提言する立場にあった。サラリーマンを死ぬまでタダ残業させることができるホワイトカラー・エグゼンプション制度もこの会議が提唱したものである。あまりの評判の悪さにこの制度の導入は頓挫したが、現在でさえタダ残業、過労死、過労自殺や過労うつ病がはびこる中でこのような制度を導入すればどういう結果になるかは自明の理である。

そのような人物がオーナーを務めるプロ野球球団で、「有能だが自己主張する者よりも黙って言うことを聞く者が優先」という選手の起用方針が採られたことは大変興味深く、そして、その結果が惨憺たるものに終わったことはそれ以上に興味深い。

オリックスで今年起きた出来事が、規制緩和が進む日本のサラリーマン社会でこれから起きようとする出来事の先駆けだと言ったらうがちすぎだろうか。有能だが物言う労働者は排除され、無能だが従順な者がそれに取って代わる。その結果、あちこちで技術の継承が途絶え、「高品質社会日本」が現場から崩壊していく。その「物言う職人」の象徴が、中村紀洋だったのではないだろうか。

私にとって嬉しかったのは、日本プロ野球界が「物言う代わりに結果を出す男」中村紀洋を見捨てなかったことである。その能力を見抜き、チーム作りの中核に据えた中日は日本一になった。その日本一になった日本シリーズで、中村はMVP(最優秀選手)のタイトルを獲得した。私はそのことをとても嬉しく思う。

自分をボロ雑巾のようにポイ捨てした「21世紀の新たな皇帝」・宮内オーナーを見返すことができたのだから、中村よ、堂々と胸を張って歩け。世間は、日本球界は、まだまだお前を必要としている。
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