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06/9/23海保
はじめに
2005年に発生した、一瞬の入力ミスが404億円という莫大な損害をもたらしてしまった株の誤発注問題は、その損害賠償をめぐって会社間でまだ決着がついていないようだ。
どうしてこんなことが発生してしまったのかが気になったので少し調べてみたことがある。状況がわかってくるにつれて、これなら、入力ミスが起こって当然、との思いを強くした。
入力するのは、株数の入力と売買額のたった2つだけ。作業としての単純さがまずミスの要因一つ。単純であればあるほど、慣れによる不注意ミスが発生しやすい。
入力作業のこの単純さに比して、入力する数字が奇妙なのだ。まず、株数の単位がまちまち。1株単位もあれば、50株単位もあるし、100株単位も1000株単位もある。さらに、値段も、きざみがまちまち。1円単位もあれば、10円単位も100円単位もあるという具合である。こうした複雑な状況では、勘違いが発生しやすい。
ちなみに、金融庁の調査によると、2005年だけで14,318件の誤発注が発生しているとのことである。今回のケースは、損害額の大きさから、氷山の一角であったに過ぎないことがわかってきた。それでも改善の動きが鈍いのはなぜなのか。不思議である。
もうひとつ、関連して気になることがある。それは、ミスの当事者である。ミスが発生して当然の状況でミスをしてしまったのだから、処罰はまさかないとは思いたいのだが、どうなのであろうか。
いきなり、深刻な話からはじまってしまったが、本講座では、こうした深刻なミスの発生を起こさないようにするためには、どうしたらよいかについて考えてみたいというのが、一つのねらいである。
ミス防止対策は、プラントや建設現場などでは、着実に積み重ねられている。しかし、オフィスでのミス防止は、一人一人の努力や工夫に頼りすぎて、意外となおざりにされてきたようなところがある。しかし、株の誤発注のような事案の発生にみられるように、ちょっとしたミスが甚大な被害をもたらしたりすることに、オフィスで働く人々も無縁ではなくなってきている。コンピュータによる大規模システムを相手に仕事をするようになってきたからである。
本書では、次のようなことにねらいをさだめてみた。
第1分冊では、ミスを通して、人の心と行動のくせを知ることをねらいとした。
第2分冊では、みずからの心と行動のくせを的確に自覚することで、結果として、ミスを減らし、ミス防止策を工夫できるようにすることをねらいとした。さらに、組織としての望ましいミス・マネージメントについても考えてみたい。
本コースでは、独特の仕掛けとして、受講期間を通して「ドジ日誌」を書いてもらうことにした。みずからのドジ体験から学んでほしいからである。本コースの学習が進むにつれて、その「ドジ日誌」の内容が深化したものになることが実感できれば、学習効果があったことになる。是非、ちょっとしたドジでもおっくうがらずに、記録してみてほしい。