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説得力アップ

2021-06-02 | わかりやすい表現
説得力アップ

●子どもを説得する
 言葉があやつれるようになり、自我ができはじめる3歳頃。第1反抗期がはじまります。この時期は、親が子どもに説得という行為をはじめる頃でもあります。言うことをきかない子どもをそれなりの理屈で説得しなければなりません。
 やがて小学校に入り知識が増えてくると、説得よりも説明主体の対話になっていくのですが、中学校に入る頃になると、再び反抗期がはじまります。親離れのためです。これが、第2反抗期です。
ここでも説明よりも説得する(したくなる)ことのほうが何かと多くなりますが、第1反抗期の時とは違い、子どもの側の知識量も豊富になりますから、説明と説得をうまく使い分ける必要が出てきます。

●説明と説得をバランスよく
 両者はそれほどはっきりとは区分はできないのですが、説明は子どもの知識に関連づけての情報提供、説得は子どもに有無を言わさずにこちらの言い分や考え方を受け入れさせることとなります。
 説明ばかりではらちがあきません。そうかといって、力まかせの説得ばかりでは、表面的な納得しか得られません。説明と説得とがほどよいバランスを保つことが求められるところです。
 わき道にそれますが、夏休みになると、NHKで子ども電話相談がはじまります。
 子どもの質問のおかしさ、おもしろさもさることながら、回答の先生方の名解説には感心させられます。ただ、「わかりましたか?」とアナウンサーが聞くと、どの子どもも「わかりました」と答えるのが気になります。おそらく、いかに名解説でも、たとえば「熊は4本足であるくのに、人間はなぜ2本足であるくのですが?」「命はなぜ一つなのですか?」という5歳の子どもへの回答が、本当に「わかっている」かは、かなり疑問です。でも、どの子どもの一様に「わかりました」と答えます。ここには、説明の妙だけではなく、NHKという権威?による説得の力を子どもが感じ取っているような気がしました。

●「説得への抵抗にも配慮を」説得のコツ その1
 説得の入り口のところで、説得されることそのものに抵抗する傾向のあることが知られています。心理的リアクタンスと呼ばれています。反抗期の中学生くらいになると、とりわけ強いリアクタンスがあることを承知しておく必要があります。
 事の是非よりも、ともかく説得されることへの反発、時には説得内容とは逆の方向へあえて態度や信念を変えてしまうこともありますから、困ったものです。
 心理的リアクタンスを少しでも下げるようにしないと、いつまでも入り口にとどまってしまうことになります。
 そこで、TPOに応じて、その場でただちに説得、といった急いた気持ちを押さえて、
  • あめ玉でもすすめる
  • 雑談や世間話をする
  • 言い分をじっくりと聴く、
といったことが考えられます。要はあせらないことです。

●説明と同意の上で」説得のコツ その2「
 医療現場でのインフォームド・コンセント(説明と同意)については、ご存じだと思います。治療側がしっかりと根拠を示して、治療方針を患者に納得してもらうというものですね。
 日本でもかなり普及してきてはいますが、現場ではさまざまな問題があるようです。そのいくつかを挙げてみます。
・患者の理解にあう形での根拠の示し方が難しい。
・患者の不安が理解を妨げてしまう。
・治療側への一方的な依存が発生しがちで自分なりに理解し納得してもらえない。
患者と医師とは違って、子どもと教師の間には、基本的に対等な関係ではありませんので、真のインフォームド・コンセントは、子ども相手ではなかなか難しいところがあります
 子ども相手になると、わからないままの納得のほうが多いかもしれません。そのようなときは、「そうせざるを得ないので、そうした」という認識を説得する側が、しっかり持つことが大事ではないかと思います。
 薬を飲ませたい、しかし、なかなか根拠を示して説明してもわかってもらえない、本人も納得しない。しかし、ことは急を要する、というような場面はいくらでもあります。むろん、可能なら、保護者や担任に立ち会いのもとでの説得もあります。

●「勇気づける説得もある」説得のコツ その3
 説得はおおむね、こちらの言い分を相手に受け入れさせることですが、時には、子どもなりの考えや行動の良いところを見つけて、そのすばらしさをほめ勇気づけてやることもあってよいと思います。
 説得、すなわち対立、強制ではなく、子どもなりの態度や信念に対して教師なりの共感のメッセージを送ってやる勇気づけも、広くは説得と言って良いかもしれません。

●「説得には権威も必要」説得のコツ その4
 教師はただ教師であるだけで権威者だった時代は、子どもに対する説得は実に簡単だったと思います。その意味では、今の時代、説得の難しい時代です。しかし、教育という知の陶冶の現場では、むしろ、好ましい時代というべきかもしれません。
 権威をかざしての説得は、相手が子どもであるだけにできるだけ避けたいところです。子どもの知識に訴えながら、みずからの意志で納得することが知的な陶冶につながるからです。
「友達をいじめるな」とこわもての説得をするよりは、そのことの理非を考える機会と知識を与えることが説得の王道です。
 もちろん、いつもそれでいけるとは思いません。あれこれ言う前に子どもを動かさなければいけない緊急の時もあれば、絶対にやってはいけないことを止めさせなければならないときもあります。そんな時は、権威を振りかざしての本気の説得が必要です。
 
●「恐怖に訴える」説得のコツ その5
 権威を振りかざしての説得がだめなら、いよいよ最後は、恐怖や脅しに訴える説得になります。「言うとおりしないと罰(ばち)が当たるよ」という常套句がそれです。この変形は実にいろいろありますね。
 もっとも「罰(ばち)」が通用するのは、小学生まで。中学生ともなると、もっと理屈っぽくなってきますから、「罰(ばち)」の内容を科学的なものにしないと納得してもらえません。罰(ばつ)としては「携帯使用禁止」、脅しとしては、「いい高校に入れませんよ」などなど。
 なお、恐怖の裏返しとしては、安心や賞賛があります。これも、説得に使えます。「この薬を飲めば痛みがなくなる」「よく勇気を出して話してくれたね」などなど。
 いずれにしても、このコツは、あまり頻繁に使うと、効果が薄れます。

●最後に
 説明が理性的であるのに対して、説得には、感情的な要素が入ります。相手にどうしてもそうしてもらいたいという気持ちがあります。その気持ちのままに説得すれば効果があがるというものでもありません。
 そこには、説得のテクニックが必要です。言葉による説得をもっぱら想定して、そのいくつかを紹介してみました。

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