国鉄東京印刷場製金額式乗車券いろいろ ~その7

 国鉄東京印刷場製金額式乗車券いろいろの第七弾は「地方に飛び出した東京印刷場製金額式乗車券」についての3回目です。

③ 静岡地区用大人・小児券

昭和59~60年ごろ、東京印刷場の硬券は、今まで名古屋印刷場の管轄であった静岡地区(静岡鉄道管理局管内)にも登場しました。

   images (草薙駅発行、大人・小児券)

雰囲気的には東京印刷場の様式を踏襲しているようですが、今までのものとは勝手が違い、金額部分の数字が小さいものとなっています。

   images (荻窪駅発行、モノクラス化直後券)

どちらかと言うと、モノクラス化直後の東京印刷場のものと似ています。

なぜ、静岡地区のものが新潟・仙台地区のように首都圏近郊のものと同じような様式にされなかったのか不明ですが、このようになった理由は、名古屋印刷場時代の券と何か関係がありそうです。

   images (神岡駅発行、名古屋印刷場大人・小児券)

これが一般的な名古屋印刷場製の大人・小児券です。
発駅名が縦書きになっており、角の丸く、縦の片が途切れて歪な四角で囲まれているのが名古屋印刷場の特徴です。
この様式は名古屋・金沢の各鉄道管理局で使用されていました。

   images (静岡駅発行、名古屋印刷場静岡地区大人・小児券)

ところが名古屋印刷場の場合、静岡鉄道管理局で発行される券だけは様式が異なっており、名古屋印刷場と東京印刷場を足して2で割ったようなものでした。
一瞬どこの印刷場のものなのか迷ってしまう感じですが、活字の雰囲気を良く観察すると名古屋印刷場のものであることがわかります。
なぜ静岡地区だけがこのような独自の様式であったのか定かではありませんが、首都圏地区と隣接した管理局のため、首都圏管内の改札業務に支障を来たさないように配慮された結果であったものなのかもしれません。

話は戻りますが、東京印刷場で作成された静岡地区用の金額式券は、金額欄の活字や「円区間」の活字の配列、小児断片の記載方法に至るまで、名古屋印刷場の様式に則られているのがわかります。
特に小児断線の記載方法は東京印刷場では横書きで「金 ○○(小児運賃差額)」という表記がされていますが、静岡地区向けのものでは縦書きで「○○(大人運賃)―窓口番号、発行駅名」という表記方法になっています。
(次にご紹介する名古屋駅のもののように、「窓口番号、発行駅名→○○(金額)○○(小児運賃差額)」という表記のものもあるようです。)

   images (伊那市駅発行、○改大人・小児券)

   images (名古屋駅発行、名古屋印刷場、○改大人・小児券)

また、名古屋印刷場だけが最後まで守り続けた小児断片の「○改」記号が引き継がれているのもこの券の特徴です。
「○改」記号は運賃改定後に改版されて初めて発行された「第一版」を示すもので、かつては各地の印刷場で使用されていましたが、国鉄末期には名古屋印刷場だけで使用されていたようです。

このように、東京印刷場の静岡地区用券は、名古屋印刷場の雰囲気を存分に残した「合いの子」のような様式の券でした。

それでは次回、静岡地区用の小児券について研究してみましょう。

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