JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
国鉄東京印刷場製金額式乗車券いろいろ ~その4
国鉄東京印刷場製金額式乗車券の第四弾は「○ム券について」です。
4.○ム券
正式には「○ム券」という名称はないようですが、一番判りやすい表現かと思われますので敢えてこのように呼ばせていただきます。
国鉄内部では「簡易委託駅用」と言われているようで、窓口で乗車券類の発売が行われていても、近距離券や回数券など発売可能な券種に制約のある簡易委託駅に設備するために規定されたものです。
その種類は設備される駅の委託形式および管理局ごとで若干の違いがありますので、それぞれ見てみましょう。
① 千葉局・西局管内簡易委託駅用
千葉局および東京西局管内の簡易委託駅用に設備されたものです。
大人用・小児用それぞれ規定されており、小児断線のある大人・小児用の設定はないようです。
基本的には大人用のものに準じていますが、「円区間」の右上に「○ム」の表示があることと、小児運賃の表記があります。また、発行箇所名には簡易委託駅を示す「○簡」の記号があり、駅名の最後に「駅」の文字がないのが特徴です。
大人用しか手許にありませんが、別に小児用もあると思われます。
千葉局では、那古船形の他、行川アイランド、江見、下総橘の各駅が該当し、東京西局では穴山駅が該当します。
② 水戸局管内簡易委託駅用
これは水戸局管内向けの簡易委託駅用のものです。(~その1)で登場したものを再掲しています。
千葉局のもの同様、「円区間」の右上に「○ム」の表示がありますが、スペースの関係上、小ぶりの活字になっています。
水戸局向けのものの場合、前述のように小児断片記載の金額が小児運賃発売額であることが特徴です。また、発行箇所名の前に「○簡」の表記がありますが、千葉局のものと違い、「駅」の文字がついています。
③ 無人駅用 大人・小児用
通常は無人駅(もしくは無人駅扱い)ですが、多客時等に限り、臨発用として設備されているものです。
水戸局のもの同様、「円区間」の右上に「○ム」の表示がありますが、発行箇所名に「○簡」の表記がありません。
日向和田駅はハイキング等の多客時用で、船橋法典駅は中山競馬場の多客時に発売されます。
また、このほかの例として、寒川神社の初詣用として宮山駅に設備されています。
④ 無人駅用 小児用
上記③のように多客時を想定したものとなっているため、小児用券も設定されています。
大人・小児用同様、「円区間」の右上に「○ム」の表示がありますが、スペースが取れる関係なのか、大きな活字が使用されています。
⑤ 簡易委託駅用(軟券式)
これは鶴見線昭和駅の駅前にあるタバコ屋さんで委託発売されていたものです。
この様式はタバコ屋さんなどの個人商店で扱えるように設備されたもので、駅名補充の「ちぎり軟券」式となっています。
硬券の簡易委託駅用同様に「○ム」表示がありますが、こちらの活字は大き目の活字が使用されています。
当時、千葉局および東京西局以外の東京印刷場管内(東京北・東京南局)においては、簡易委託駅用の券が特別に規定されることがなかったものと思われます。
鶴見線の沿線事情によるものなのか、昭和駅には大人用しか設備されていなかったと記憶していますが、別に小児用の様式もあるかもしれません。
国鉄東京印刷場製金額式乗車券いろいろ ~その3
国鉄東京印刷場製金額式乗車券の第三弾は「小児専用券」についてです。
3.小児用
小児用券は、その名の通り、小児用として発売するための券です。
大人・小児用だけでは小児用として発売する際に小児断線を切り取る必要があるため、比較的小児用の需要がある口座に設備されました。
駅によっては大人用と小児用を揃えるパターンと大人・小児用と小児用を揃えるパターンがあったようです。
レイアウトは小面印刷の大人券に準じていますが、「小」の影文字のほか、駅名の下に小児運賃の記載があります。
大人用のように発売枚数が多くはないため、その殆どは小面印刷による印刷となっているようです。
菅沼天虎さまから前回エントリー分へのコメントの中で、小児用の集中印刷券について触れておられますが、私のコレクションの中には残念ながらございません。
ただ、初期においては東京競馬場前駅のもののように、小面印刷でありながら駅名横の矢印が長いものが見受けられ、大人専用券のような統一性は採られていないようです。