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冬の北海道に現れた「幻の白い海」…約半世紀ぶりによみがえった絶景の「ウラ側」に迫る!

2022-01-09 | アイヌ民族関連
現代ビジネス 2022.01.09 NHK北の海取材班
近年、北海道で不思議な光景が目撃されている。冬、数キロに渡って見られるのは、まるで雲が海に落ちたように真っ白い幻想的なみなも。そして春になると大海原に突如現れる巨大な渦。さらに初夏には海底を埋め尽くす無数の貝……季節の移ろいとともに目を疑うような絶景が北の海に広がっているのだ。実はこうした光景、かつては北の海の豊かさの証として多く見られていたものだという。なぜ今、“幻の絶景”たちが再び現れ始めたのだろうか――
幻の絶景を貴重な映像とともに伝える「NHKスペシャル 北の海 よみがえる絶景」が、1月9日(日曜日・午後9:15〜)に放送される。番組では、北海道の海で謎めいた絶景を追うだけでなく、徹底取材でその背景にも迫る。今回は、放送を前にその内容を一部ご紹介したい。
小樽市の海岸で見られる「幻の白い海」
雪が吹き荒れる2月。「白い海」が見られるという情報を受けて、取材班は石狩湾へと向かった。この現象は、北海道のアイヌが残した言い伝えにもあり、古くから見られてきたものだ。
地元では「群来(くき)」と呼ばれ、「大漁のお告げ」とも言われてきた。その海の色は、目撃した漁師が、「沖まで真っ白で一切下が見えない」、「牛乳を混ぜたような色」、「温泉のような乳白色」と口々に証言するほどの白さだという。その様子を詳細に捉えようと、取材班は目撃情報が多かった小樽市の銭函(ぜにばこ)海岸に向かった。
証言によると、群来が見られる可能性が高いのは夜明け頃。8台の水中カメラを海岸線のあらゆる角度に仕掛け、固定カメラの死角には水中ドローンを巡回させて、その瞬間を待ち構えた。さらにベテランの潜水カメラマンが連日、夜を徹して極寒の海に潜り、海のわずかな変化を確認。万全の監視体制で2週間が経過した。
穏やかな凪が続いた日の午前3時。暗がりの海の中を確認すると、かすかに白く濁り始めていた。大急ぎでカメラで確認すると、見えてきたのは体長30センチほどのニシンの群れだ。北の海を代表する魚が、「幻の白い海」に関係しているのだろうか。その答えは夜明けとともにわかることになる。
早朝、ドローンで上空から海を観察すると、待ち構えていた漁港全体が真っ白になり、港を取り囲む波けしブロックの外まで海が白く染まっていた。これが幻の絶景、「群来」だ。
海の白さが消え始めた頃、水中を調べてみる。すると海底にびっしり生えた海藻に、おびただしい数の白い小さな粒がついていた。カズノコとしておなじみのニシンの卵だ。
確認された群来は、幅およそ2キロ。そこにたった一晩で、なんと推定800億もの卵が産み付けられているようだ。群来が起きた沿岸には水鳥たちが次々と集まり、卵をついばみ始める。食べ物が少ない冬場のまたとない恵みとなっているのだ。しかし、この「白い」卵が群来の正体ではない。
「白い海」を大規模実験で再現
取材班は北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの協力の元、海が白く染まる現象を、実験で再現しようと試みた。幅10メートル、深さ6メートルの巨大水槽に人工海藻を入れて、繁殖期のオスとメスのニシン700匹を飼育。そこに「あるもの」を投入すると、ニシンに変化が現れ始めた……。
群来の多角的な撮影と、大規模実験で見えてきた「白い海」の正体。そしてそこに秘められた海の幸のしたたかな戦略。詳細は番組を見てほしい。
「白い海」は豊かさの象徴
それでは、なぜ群来は最近になって再び現れ始めたのか。
その背景には漁獲高日本一、北海道の漁師たちの地道な努力がある。明治から大正にかけて、北海道ではニシン漁が一大産業だった。最盛期には年間100万トン近くを漁獲していたという。これは現在の北海道の全ての水揚げに匹敵する莫大な量だ。ニシンは当時、「魚に非(あら)ず=鯡」という漢字がよく使われていた。かつては無尽蔵に獲れたため、食用だけでなく良質な肥料としても高値で取引され、巨万の富をもたらしたからだ。ニシン漁師は稼いだ財で御殿を建て、栄華を極めた。
かつてのニシン漁を知る、漁師歴70年の竹内司 (たけうち・つかさ)さんは、「ニシンが来る来ないによって、1年の生活が決まった。私たちの先代からすると、それほどまでにニシンは宝の魚だった」と振り返る。一方で、竹内さんはニシンを「人を惑わす魚」とも表現する。その言葉通り、一攫千金を夢見て、漁師たちは目の前に押し寄せる宝の魚に夢中になり、ニシンは獲り尽くされてしまったのだ。
乱獲は長年続いた。それに環境の変化も加わって、ニシンの漁獲量は激減。群来も消滅してしまった。
それから長い月日が流れ、今世紀目前。ようやく宝の魚であるニシンを取り戻そうと地元の漁業関係者が舵を切り、「ニシン復活作戦」が始まったのだ。
育成した200万匹もの稚魚を毎年放流したり、未成熟なニシンを獲らないなどの漁法を規制したりといった、地道な資源管理を四半世紀にわたって続けてきた。その努力の賜物として、約半世紀ぶりに群来が復活したのだ。
ひと冬をかけた今回の取材では、石狩湾沿岸だけで14回もの群来に遭遇することができた。海の恵みをいただいてきた私たちは、こうした神秘的な光景の消滅、そしてその復活の行く末を、これからも見守っていく必要があると改めてかみしめる取材となった。
番組ではこのほか、春の日本海に突如現れる謎の大渦の正体や、初夏に世界自然遺産・知床の海底を飛び跳ねる推定30万匹のホタテガイの大移動の撮影に成功。こうした現象の背景にも迫る。「幻の白い海」とともにぜひその絶景をご覧いただきたい。
(記事構成:高村由佳)
【番組情報】
「NHKスペシャル 北の海 よみがえる絶景」
1月9日(日曜日・午後9:15〜)放送予定
北海道の海で、アイヌや地元漁師に語り継がれる「幻の絶景」がある。冬、夜明けとともに真っ白に染まる海。春、海原に突如現れる謎の大渦。そして初夏、みるみるうちに貝で埋め尽くされる海底。今、極めてまれに起こると思われていた、こうした絶景の目撃が相次いでいる。徹底取材で真相に迫ると、その背景には、日本人にもなじみ深い生きものたちの驚異の営み、そして水産王国「北海道」の漁師たちの格闘の歴史が秘められていた。
番組ページはコチラhttps://www.nhk.jp/p/special/
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91075

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タンチョウに復活の兆し 野生生物との共生を探る

2022-01-09 | アイヌ民族関連
時事通信1/8(土) 9:10配信
 体が白く頭頂部が赤い「タンチョウ」。縁起の良い動物として知られるツルの一種で、全世界の個体数のうち約半数が北海道に生息している。江戸時代には全国各地で確認されたが、乱獲などで絶滅の危機にひんし、一時はわずか約30羽が確認できるところまで激減した。地元住民らの保護活動で徐々に個体数が増え、生息地も広がりつつあるが、タンチョウの復活は農業被害などの新たな問題も生んでいる。国の特別天然記念物と人間の共生。よりよい方法はないのだろうか。(時事通信札幌支社 千葉佳奈子)
◇国内最大級「湿原の神」
 タンチョウは翼を広げると約2メートル40センチにもなる国内最大級の野鳥だ。その昔、アイヌ民族が「サロルンカムイ(湿原の神)」などと呼び、凶暴な鳥として恐れてきたとの話もある。
 鳥類の歴史に詳しい北海道大学の久井貴世准教授によると、江戸時代には北海道から沖縄県まで全国に分布していたが、明治時代にかけての乱獲や湿原の開発などで激減。環境省によると、1952年に確認できたのはおよそ30羽にとどまり、その後、国際自然保護連合(IUCN)に「絶滅危惧種」としてレッドリストに登録された。
 危機を受け、立ち上がったのが、タンチョウが多く生息していた釧路湿原周辺の地元住民だ。穀物などを給餌する取り組みを始め、国も84年に追随した。
 給餌は実を結びつつある。NPO法人「タンチョウ保護研究グループ」(釧路市)の百瀬邦和理事長によると、現在は1900羽ほどにまで回復。IUCNは2021年12月、絶滅危機レベルを1段階引き下げた。
◇活動、実るも…
 保護活動に携わる関係者からは「活動の成果だ」と喜びの声が聞かれたが、百瀬さんは「数は増えても、給餌なしでは生きられない」と語る。「給餌場では密集が起きており、ひとたび感染症などが流行すれば、途端に絶滅の危機に陥ってしまう」という。
 給餌場の密集対策は既に始まっている。環境省は密集緩和とタンチョウの「自立」を目指し、2015年度から給餌量を削減。19年度は最大量の半分にまで減らした。公益財団法人「日本野鳥の会」(東京都)も、タンチョウが多く生息する鶴居村で、タンチョウが水場までたどり着きやすいよう、やぶ払いや倒木撤去を実施。同会の原田修チーフレンジャーは「給餌に頼らず、自然な状態で生息できるようにすることが必要だ」と説明する。
 自立を目指した活動の成果は、生息地域の拡大という形で見え始めている。札幌近郊の長沼町では2020年、100年以上ぶりにヒナが誕生し、道央の苫小牧市周辺でも繁殖が確認されている。北大の久井准教授によると、現在定着し始めた場所は、江戸時代ごろにも生息が確認されていた地域で、「かつての生息地に戻りつつある」という。
◇新たな問題、空気銃で撃ち死なす事件も
 だが、個体数の増加と生息地の拡大は問題も引き起こしている。車と衝突したり、電線に引っかかったりするタンチョウが相次ぎ、農作物の食害も増加。環境省や道によると、2019年度に事故などで保護したタンチョウは過去最多の53羽となり、20年度の農作物の被害額は700万円に上った。21年には被害を受けた農家がタンチョウを空気銃で撃って死なせる事件も発生している。
 開発事業と保護活動の衝突もある。苫小牧市などに広がる湿原「勇払原野」では、風力発電施設の建設予定地で2017年と21年に繁殖が確認され、日本野鳥の会や研究者らは「風車が建設されれば衝突や環境の変化による繁殖への悪影響が見込まれる」などと、事業者や道に事業の中止を要請。同会の浦達也主任研究員は「貴重な繁殖地を保護していかなければならない」とした上で、事業者には「なるべく生息を阻害しないよう、配慮をお願いしたい」と訴える。
◇地域一体での取り組みも
人間とタンチョウが共生できる道はないのか。北海道内の4動物園は2021年の夏から22年2月にかけ、タンチョウの事故防止を啓発する巡回展を開催。環境省は、農業関係者に対策パンフレットを配布し、開発業者など向けには、動植物の分布地を確認できる「センシティビティマップ」をホームページ上で公開しているが、「希少種でもあり、追い払いなどによる対策を呼び掛け続けるしかない」(担当者)のが現実だ。
 一方、地域一体で「タンチョウも住めるまちづくり」を目指し、2021年まで2年連続で繁殖が確認された町もある。7年前、町民や関係者が遊水池の整備や食害対策を協議する場を設置した長沼町は、学校での講演や観光施策など、町を挙げて共生への取り組みを推進。町によると、「タンチョウは町に定着しつつある。反対の声もあるが、住民の理解は進んでいる」という。
 タンチョウ保護研究グループの百瀬さんは「お互いの立場を尊重し合うこと。タンチョウが戻り始めた自治体では、住民、農家を交えて協議することが大事だ」と強調した。
◇取材を終えて
 環境省の2020年度版レッドリストによると、日本で絶滅の恐れがある動植物は3716種で、前年度から40種増えた。野生生物が絶滅する要因は、乱獲や開発、外来種の持ち込みなど、人間の活動によるものとされる一方、保護活動を選択できるのも人間だ。取材を通じて知った、タンチョウ保護の取り組みと、それによって生じた課題。人間と野生の動植物との共生は「どうバランスを取るか」に尽きるのかもしれないが、よりよい道はないのか、常に考えていきたいと思った。(2022年1月4日掲載)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b61797b9acf18d203899c28e94c2dc1d0c81d86

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