なかよしの作家、上條さなえさんの新刊です。
この本は、先に出版され話題をよんだ『10歳の放浪記』(講談社刊)のその後を描いた作品です。
昭和36年、当時10歳だった彼女は、母親と姉と離別し、倒産し荒れすさんでいた父親とふたりで、池袋でホームレス生活をするはめになってしまいます。
そこでのつらさと、子どもの知恵、生きぬく力のたくましさを描いたのが『10歳の放浪記』でした。
この本はNHKで、上條さんへのインタビューと作品のドラマ化、それらを交互に織り交ぜたドキュメンタリーとして放映され話題をよびました。
大人の、いまを生きている上條さんと親しい私は、その番組をみながら、幼かった彼女のけなげさに、思わず抱きしめたい衝動に駆られました。
そこには、私の知らない子どもだった頃の彼女の、生きる姿が映し出されていました。
こんな風に自分の子ども時代を赤裸々に吐露するという作業はきっと苦悩に満ちていたと思うし、書きながらぽろぽろと指のあいだからこぼれ落ちていった「いまの現実」の悲しみもあったはずです。
けれど、それが物書きというものです。
さまざまな逡巡を経ながらも、ご両親が亡くなったあと、彼女はそれを書ききってしまったのです。
そして今回の『かなしみの詩』では、ホームレス生活に終止符をうち、房総にある施設で過ごすことになった、その後の生活が綴られたいます。
施設の子どもたちのすがた。先生や、別れ別れになっていた母親や姉との交流。
そういったものが、静かな筆致で淡々と、けれど熱をこめられ、おだやかに綴られています。
そのおだやかさが、なおのこと読者の胸をゆさぶります。
感動の書です。ぜひお読みになってみてください。
この本は、先に出版され話題をよんだ『10歳の放浪記』(講談社刊)のその後を描いた作品です。
昭和36年、当時10歳だった彼女は、母親と姉と離別し、倒産し荒れすさんでいた父親とふたりで、池袋でホームレス生活をするはめになってしまいます。
そこでのつらさと、子どもの知恵、生きぬく力のたくましさを描いたのが『10歳の放浪記』でした。
この本はNHKで、上條さんへのインタビューと作品のドラマ化、それらを交互に織り交ぜたドキュメンタリーとして放映され話題をよびました。
大人の、いまを生きている上條さんと親しい私は、その番組をみながら、幼かった彼女のけなげさに、思わず抱きしめたい衝動に駆られました。
そこには、私の知らない子どもだった頃の彼女の、生きる姿が映し出されていました。
こんな風に自分の子ども時代を赤裸々に吐露するという作業はきっと苦悩に満ちていたと思うし、書きながらぽろぽろと指のあいだからこぼれ落ちていった「いまの現実」の悲しみもあったはずです。
けれど、それが物書きというものです。
さまざまな逡巡を経ながらも、ご両親が亡くなったあと、彼女はそれを書ききってしまったのです。
そして今回の『かなしみの詩』では、ホームレス生活に終止符をうち、房総にある施設で過ごすことになった、その後の生活が綴られたいます。
施設の子どもたちのすがた。先生や、別れ別れになっていた母親や姉との交流。
そういったものが、静かな筆致で淡々と、けれど熱をこめられ、おだやかに綴られています。
そのおだやかさが、なおのこと読者の胸をゆさぶります。
感動の書です。ぜひお読みになってみてください。