長い友人である、編集者であり、出版社の取締役でもある、赤石忍さんが、このたび、ご本を出版されました。
「私にとっての石川くん」と言う、俳句とエッセー集です。
読みながら私は、これまで知らなかった、彼の「ある部分」を、覗き見させてもらったような気分になり、すごく楽しい気持ちになりました。
赤石さんって、バランス感覚のある、すごくいい人。
そして児童文学に対して、熱い熱い思いを持っている人。
誰もが抱く、イメージがきっとそうだと思います。
だから彼は、ご自分の会社のみならず、児童書の会社で作っている大きな組織でも、いつも中心になって、細々したことや、大変なことを、嫌な顔一つせずに引き受け、みんなを束ねてくださっているのだ、と。
それに、お酒は召し上がるけれど、甘党だってことくらいは、知っていましたけどね。
よく、アイスクリームがたっぷり乗った、甘〜いコーヒーゼリーなどを、会議の後に、ご一緒に食べたりしていますし・・・。
ところがところが、驚くような「ある部分」を持った人だったのです。
実は忍々は、(もう赤石さんなんて、きどった言い方はやめます)俳人である、坪内稔典さんが代表をなさっている、俳句の会「船団の会」の会員です。
ですからずっと俳句を作っています。
私はその会から出た、文庫本の句集の解説を書いていた、忍々の文章を以前から拝読していたので、文章のセンスがとてもいい人だということは知っていました。
ところが、この本を読んでいたら「文章のセンス」云々のレベルの話ではないことを知ったのです。
忍々って、何者?
ナマコ?
いやいや、ナンセンス作家?
いや、シュルレアリストの俳人?
冒頭から出てくる、石川くんの存在感に圧倒されながら、その後ろでナマコの皮をかぶって、顔を出したっり、引っ込めたりしている、忍々らしき人影の、石川くんを描く筆力と、折々に挟まれた、シュールでナンセンスな俳句。
楽しそうで、苦しそうで、楽しそうな日常。
挙げ句の果てに津軽弁。フランス語?
このぶっ飛んだ、描写力に、ただただ驚き、吹き出し・・・。
思わず「忍々〜!」って叫んでしまったくらいです。
この描写力と、ユーモア。
そうそう、児文協の理事長と話していましたが、U理事長はこのご本を「悲しみ」と表現していました。
なるほど、悲しみか・・・。ナンセンス作家のエキスパートの麟太郎理事長が、おっしゃるのだから、ナンセンスに秘められているのは「悲しみ」なのだろうと・・・・。
ユーモアだけではない、悲しみさえ漂わせ・・・。
作家に、「ここは、こう直したほうがいい。ここは面白くない。ここは面白い」などと、編集者として指図していた姿など(実は、私は20年以上のお付き合いですが、一度もご一緒に仕事をしたことがありません。彼から原稿依頼もされなかったし、私から原稿を持ち込んだこともありません。ですから、常に対等平等。友人として、フェアな関係をずっと保ち続けられていられるの・・・って、幸せなこと? 不幸せなこと?・・ま、それくらい、仲よしってことですが。笑)想像もできません。
大プロ(?)の編集者たちの心を、大きく揺さぶってしまったようで、今夜は、その親しい人たちと数人で、この「私にとっての石川くん」を酒の肴に、飲み明かそうという話になりました。
刺激的なご本です。これは。
私も骨折以来、初めての一人での外出です。
足元に気をつけて、初お出かけを楽しんできます。
ぜひぜひ、皆さんもお読みになってください。
彼の文学や俳句への、美意識やエッセンスを感じられる一冊ですから。