長らくご覧頂いた「2012ネパールの旅」も、いよいよ最終回を迎えました。
最終日(12月1日)はオプション・ツァーの「エヴェレスト遊覧飛行」があり、他のメンバー10名の方は早朝からこのツァーに参加するために空港に向かわれました。私達夫婦は当初から「遊覧飛行」に参加するつもりはなく、この時間を利用してカトマンドゥに住む知人に会おうと思っていました。しかし飛行が終わってホテルから空港へ再出発するのが10時過ぎと、あまりにも短い時間しかなので困っていました。前夜、ガイドのラジャン氏に相談すると、相手に電話してくれて8時にホテルに来てくれることになりました。知人のラジェス氏は息子の友人で、カトマンドゥの繁華街タメルで古くから紅茶商を営み、いつも「お父さん、お父さん」と歓迎してくれます。この日も忙しい中をお土産を持って駆け付けてくれました。6年前は日本へ行っていて行き違いで会えなかったので、9年ぶりの再会です。すっかり貫録がついたので「モタウヌボ(太りましたね)」<これは褒め言葉で、女性に対してでもこういう>というと、近頃はもう褒め言葉ではないと笑っていました。流暢な日本語で近況などを話すうちに、遊覧飛行を終えた人たちと迎えに行ったラジャン氏も帰ってきました。二人は知り合いらしく肩を叩いて話していました。再会を約してラジェス氏と別れると、間もなく出発の時間となりトリブヴァン国際空港へ…。こうして長いようであっという間の今回のネパール旅行は終わりました。
さて、これまでの記事でも随所にInocchi-san(猪花光男さん)、Maru-san(丸屋博義さん)撮影の的確にシーンをとらえた美しい画像を使わせて頂いてきました。その意味でこの「ネパール旅行記」は女性二人の写真も含め5人の合作ですが、最後に丸さんに「遊覧飛行]の「文と写真」を頂きました。イノッチさんの写真と合わせて、有終の美を飾って貰うことに致します。ありがとうございました。
(Photo by Inocchi-san)
30年ほど前にグランドキャニオンの遊覧飛行でえらい目にあった私は、それ以来小さな飛行機は好きではない。いや怖い。したがって今回のネパール観光の目玉ともいえるエベレスト遊覧飛行はご辞退申し上げたいのが本音であるが、山歩き愛好家初級編の私としては、せっかくネパールまで来て世界一高いエベレストを見ないわけにもいかず、恐る恐る参加することとした。
飛行機はカトマンズ空港から飛び立つのだが、エベレスト周辺の山々に雲がかかっていると飛行が難しいため出発が遅れたり、場合によってはキャンセルとなることも少なくないと聞かされ、「オイ、オイ、大丈夫かいな」とさすがの私も少々及び腰ではあったが、日ごろの行いが良かったのか、当日の天候はベストコンデション。遊覧飛行の小型飛行機は順番通り次々とエベレストに向かって飛び立った。
私たちが乗った双発小型機は横3列席×縦10列の30人乗りで全員が窓側に座れるよう配慮されており、往路は左側の席、復路は右側の席からヒマラヤの山々を望める。
私は右側の最後部座席であったため往路は左側座席の窓越しにヒマラヤ山脈を遠目に眺めながらであったが、おかげさまで飛行機もあまり揺れることなく順調に飛んでくれた。
天候のコンデションが良ければ操縦席に案内され、そこから景観が望めるサービスがあると聞かされていたが、一定の高度を保ち飛行を始めたころから、少々色は黒いが(これは余計)小柄で美人の客室乗務員が右側座席の乗客から優先的に操縦席に案内してくれた。私は小さな飛行機の中ではあまりウロウロしたくないのだが、折角のお誘いにて、甘んじてお受けすることにし、恐る恐る前方までたどり着き、操縦席に上半身だけお邪魔させていただいた。
この山々の景観はその時に操縦席から撮影したものであるが、どれがどの山なのかさっぱりわからない。しかし、初めて見るヒマラヤの山々は私の想像を遥かに絶するものであり、雄大で美しい光景は心の底から感動するものであった。
その後、飛行機はゆっくりと左に大きく旋回し折り返した。(飛び立って約20分程後)それはエベレストを遠目に望みながら少々やり過ごした時点からの旋回であったように見受けられたが、その瞬間、私の座席右側の展望が大きく変わった。な、な、なんとあの8500mを誇るロッツェが右に、そして世界一高いエベレスト、左下には7900mのヌブッエが、私の目の前に静かに .悠然と聳え立っていた。
飛行機会社いわく、エベレストには8kmの地点にまで近づけるとのことであるが、今回はその距離ではないものの天候がすこぶる良かった故、かなり近いところまで接近したことは言うまでもない。とにかく圧巻である。それ以外の言葉は見いだせない。(右ロッツェ、中エベレスト、左ヌブッエ…写真下)
すると機内からは大きな歓声が沸き起こり、乗客全員が総立ちで私の座っている右側の席に「ド、ドッ」と押し寄せた。その瞬間、私はこの世界一のエベレストの雄姿をじっくりと鑑賞する余裕をなくし、そして折角の美人客室乗務員のガイドアナウンスもうわの空で、飛行機がバランスを崩して墜落しないかと、心配で、心配で、肘掛を強く握り締めただひたすら無事な飛行を念じた。
メカが信じ切れず、おまけに高所が苦手な私にとって恐怖のどん底状態であることもつゆ知らず、昔は娘だったおばさま連中のテンションは上がりっぱなしにて、思わず「自分の席に戻ってくれ、バランスが崩れる」と発していた。
その後、少々機内の興奮状態も沈静化し安堵したのだが、今度は西洋人の綺麗なおねえさまが前方から私の席までやってき て「横に座って写真を撮ってもいいでしょうか」と尋ねられた。私はにっこり微笑んで思わず「イエス、オフコース」と云っていた。どうやら私の座席位置は観覧にはベストポジションであったようだ。(右側最後部席)復路で辿るヒマラヤの山々はぐっと至近距離からのパノラマであった。
写真の出来はご勘弁いただき、どうぞご鑑賞下さい。「ダンニャバード」
<以上写真と文・丸屋博義>
<以下の写真は猪花光男氏撮影>
<2012 ネパールの旅 終>