明るい光に満ちた一日でした。 そんな日は、空も花も木々の葉も美しい色になって私たちの目を、心を、喜ばせてくれますね。
光には色がないのに、光は色を生み出すことに、改めて感動を覚えます。
今日は、私が日頃から文章も素晴らしいと思っている染職家、志村ふくみさんの著書から少し引用させていただきながら細野朝士さんの万華鏡映像をご覧ください。
色彩
色はどこから生まれてきたのだろうか。
宇宙から射す光は、空や海を染める。
その青藍(あお)は、無色であり、透明である。
太陽や、夕焼け、火の真紅(あか)も人間の手に触れることはできない。
その色は神々から与えられた宇宙の色なのであろう。
しかし、光がこの大気圏に入ってくると、さまざまな事象(こと)や物質(もの)に出会い、光は戸惑い、傷つき、ちりぢりに分かれる。
その分散された光は地上のすべての色となって現れ、生類に与えられた色は、命ある限り輝き、死と共に消滅する。
志村さんは 色彩を生み出す光の神秘を分かりやすく、そして謙虚に、心に響く言葉で伝えていると感じます。 染色という色を生み出す仕事の過程で、光の恩恵を思い、自然から色を取り出すことを考えてきた人間の技、工夫の素晴らしさを教えてもらいました。 その糸を織り上げる技と生み出される模様にも圧倒されます。 今日、細野さんの作品を拝見しながら、この文章をお伝えしたくなりました。
この万華鏡はオーロラシリーズ の1点で、2ミラー7ポイントの映像を見せる作品「O7W」 です。 筒はシンプルなスタイルで、オイルセルの背景は透明な黒です。
正面からの光を受けて、光の明るい日には特に、鮮やかで、繊細な映像を展開します。 すべて同じ万華鏡で見ることのできる色模様です。
細野さんの万華鏡映像は、まさに光が筒の中に創りだす色です。 どうしていつもこんなにきれいなのか・・・ 偏光のなせる技とはいえ、色のないオブジェクトからこれほど多彩な色彩を生み出すことにいつも驚き、その変化に目を奪われてしまうのです。