カレイドスコープ・エキスポで新作発表された作品の中でも、一番凝っていると思ったのが、スティーブン・グレイさんの「Dragon's Liar」です。上の写真だけでもいったいどんな万華鏡なんだろうと思わせますね。彼の言葉を借りれば、ドラゴンの心と体に入り込む感覚だそうです。
外観は複雑な機械のような作りです。 木材、金属、ガラス、アクリル、そしてギアやノブなどが組み合わされています。これだけたくさんの部品を組み合わせる設計もすごいけれど、さらにその部品を美しく創り上げるエネルギーも能力もすごいですね。メカの面白さとドラゴンのファンタジーを表現するために、金属部分の装飾デザインにも凝りました。もちろん木工部分の仕上げも素晴らしいです。
こちらからは見えませんが、ボディー向こうには回転するホイールがあり、アクリル板の湾曲したピースを配置しています。
アクリルのカーブにダイクロイックフィルムを張り、光を当てます。そこから生まれる色に染まった反射する光を、また透過する光を、独自に開発したミラーシステムを通して、見るのです。
映像に求めたのは、広がりと奥行きのある宇宙のような空間に展開する色模様。
誰も考えないようなアイディアを形にするスティーブン・グレイさんですが、1990年代には斬新な木工デザインと新しいミラーシステムのアイディアの万華鏡を数多く創作し、それらの貢献に対して、BKSの「創造的作品賞」を受賞していました。
数年前にBKSに復活してから、さらに歩みを進めています。今回はこの作品のために6枚のミラーを使ったシステムを考案しました。
今回、デモンストレーションでは、カレイドスコープルネッサンスの初期に発表した、パラソルカレイドスコープのミラー組みの過程を見せてくださいました。私は作家ではないので、鏡のカットにしても、組み合わせも想像もつかないことでしたが、興味深く拝見しました。見ていると簡単そうで、こんな仕組みだったのかと、その時は思いましたが、やっぱり、まだ理解が追いつかないところもあって、不思議な気持ちです。
ミラーシステムの先にカード(オブジェクトの代わり)を置いて覗いてみると、こんな映り方でした。ネガティブ・スペースを使うことで奥行きと立体感と連続性を生み出すそうです。
黒い、深い部分があるからこそのパラソルイメージなんですね。
昨年結婚なさって、素敵な奥様と幸せそうでした。ジェロームに工房を構え、ますます意気軒高な作家さんです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます