この写真の万華鏡は、一つの時代の区切りを示すものです。 作者はキャロリン・ベネットさん。ここ数年彼女が力を入れているビーズチェインアートで、手元にあった以前の万華鏡を飾った記念すべき作品です。 彼女は、6月に開催されたBKSのカレイドスコープ・エキスポで、C.Bennett Scopes の事業から退いて、人生の次のステップへ進むことを発表しました。
誰もが気楽に楽しめるプロダクションタイプの万華鏡を多数作ってきたベネットさんの功績は、独自の道であり、ビジネスモデルの一つとして、万華鏡界を開拓してきたといっても過言ではないでしょう。
キャロリン・ベネットさんはニューヨーク州北部で生まれ育ち、ニューヨーク大学でアートを学び、、ニューヨーク州立大学で美術史、美術教育の学位を取りました。キャロリンが万華鏡に出会ってその面白さを知ったのは9歳の頃、古い百科事典にあった作り方を見て自分で作ってみた時でした。1973年、高校の美術教師として教えていたときに、再び、万華鏡を作り始め、趣味を超えた興味の対象になっていったのです。1978年教師を辞め、万華鏡作家として歩み始めました。自分の家の工房から始まり事業として拡大していったのです。ちょうど万華鏡作家がアメリカで生まれ始めた時期で、その活動がスミソニアンマガジンに特集され、コージー・べーカーさんがその記事を見て、彼女を訪ねて行ったのが、二人の出会いだったと聞いています。
次の写真はそのスミソニアン・マガジンに載っていた制作中の彼女の写真です。 (以前ベネットさんにいただいた記事から使わせていただきました。)
1970年代、彼女にとって万華鏡は新しいアートの形態であり、日々新しい展開を目指して研究、試作を重ね、外部のデザイン・内部の映像の両方に個性あるアート表現をめざしました。永遠に新しいものを生み出し続ける万華鏡映像に日々新たなインスピレーションを得てきました。彼女の作品は現代的な素材を使って、デザイン性を重視して生み出されたものばかり。その斬新なアイディアや現代的な万華鏡は数々の賞を受賞し、世界中の人に楽しまれてきたのです。
彼女は、一貫して万華鏡の面白さ、楽しさを伝えることを目指してきました。 子供向けの万華鏡の本は、私も以前、万華鏡を学ぶ際に大いに参考にさせていただいたほど、内容が濃く、わかりやすく、大切なことを伝えていると感じました。
手ごろな価格で子供たちに提供された、厚紙の筒のタイプも、品質にはこだわりつつ、楽しさと鮮やかな色合いを見せていました。
私が何度もご紹介してきた「リキッドサスペンション」シリーズは、アクリル製のプロダクションタイプながらたくさんの楽しみを提供してくれる優れた万華鏡です。スマートなフォーム、美しくしっかりとした加工、バラエティーに富んだデザイン、そして大きなリキッド入りセルは、そのまま見ても美しいカラフルなオブジェクトが筒のデザインに合わせて考えられています。3ミラーシステムで視野いっぱいに映像が広がります。 まだ日本に作家さんが少なかったころから、このシリーズは日本でも数多く販売されてきたと思います。そして、今でもその魅力は失われていません。
ベネットさんは写真家としても活躍し、BKSのコンベンションでも写真をたくさん撮ってくださいました。 昔からの貴重な作品の写真や昔の活動の記録なども万華鏡界にとって貴重な財産ですね。またコージー・ベーカーさんが亡くなった後は、BKSのリーダーのひとりとして、BKSを牽引してくれた功労者です。
C.Bennett Scopesのビジネスは、Cape Kaleidoscopes が引き継ぐこととなり、これからもプロダクションタイプは、制作されていくことが決まりました。
ベネットさんは引退ではなく、これからも一点ものの万華鏡を作ったり、写真やほかのアートにも関わってくとのこと。
長身なうえに姿勢がよく、いつもアクティブで、カラフルで目立っていたキャロリン、私たちをいつも元気づけてくれたキャロリン。 これからも彼女らしく、人生を楽しんでいくことでしょう。
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