毎日新聞(大阪)3月3日夕刊。異業種交流組織「毎日21世紀フォーラム」(2月19日開催) での渡辺喜美(元行政改革担当相)代議士の講演記事から抜書きしました。
<事務次官会議が大臣答弁を制限する>
私は天下りを根絶するためにまず、各省あっせんをやめさせようと考えた。議論の中で、「押し付け的な天下りはだめだが、そうでないものは認めよう」という話もあった。しかし、相手先から依頼書を出させるほど、天下りは巧妙である。
その時、江田憲司議員(無所属)から「押し付け的なあっせんとは?」と問う質問主意書が届いた。私は「国民の目から見て押し付けに映るものを指す」と答弁しようとしたが、それが大問題になった。
閣議前日には事務次官会議が開かれ、そこで了承されない案件は閣議に出せない慣行がある。事務次官会議は私の答弁書を認めない、と決めた。最後は安倍さんが「答弁書を閣議にかける」と決断したが、このようなバトルを経て天下り規制は第一歩をしるした。
<官僚による抵抗――リーク、悪口、サボタージュ>
大臣に就任した時、官僚のリーク、悪口、サボタージュに気を付けるよう、ある人が忠告してくれた。その洗礼をいきなり受けた。
就任直後、何も決まっていないのに、新聞1面トップに「公務員制度改革の概要固まる」の記事が躍った。メディアを使ってたくみに議論を方向づけるたくらみで、これを撤回させることから私の仕事は始まった。
方々で私の悪口を吹き込み、孤立させようともした。行革推進本部の専門調査会で、5年をかけて出口のない議論をするシナリオも作っていた。頼んでいた(調査会)座長への電話連絡さえ2週間、ほったらかしにされた。これが官僚である。
あぜんとしたのは07年5月末、安倍さんがこの問題を「国会を延長してでも」と公言した途端、年金記録改ざんの不祥事が次から次に噴き出た。支持率は急落し、参院で敗北。退陣に追い込まれた。中川秀直さんは「官僚の自爆テロだ」と評した。安倍内閣では霞が関の守旧派、民主党、メディアのトライアングルに天下り規制を阻まれた。