(しんぶん赤旗日曜版2020.12.20.)
――米国出身のファクラーさんは、日本での大学院留学などを経て2009年から、ニューヨークタイムズ東京支局長を務めました。就任早々驚くべきことに直面したそうですね。
○マーティン・ファクラーさん
首相官邸(麻生太郎政権)に支局長就任のあいさつに行ったとき、官邸の国際報道官(外務省からの出向)から「前任者の(「慰安婦」などの)記事が政権に批判的にすぎる」「官邸からの取材協力が欲しければ、前任者の記事を批判し、『自分は違う報道をする』旨を文書で提出するように」と言われました。
驚きました。以前、中国で取材中、天安門広場前で警官に捕まり、「自己批判」を迫られたことを思い出しました。それで「日本の官邸は中国と同じことを私に頼んでいるのですか」と聞いたら、報道官は「違います、違います」と慌てました。
そんな誓約書を私は提出しませんでした。すると、私が支局長の間(2009年~2015年)、首相にインタビューする機会は一度もありませんでした。
――それはひどい話です。支局長としては大変だったのではありませんか。
○マーティン・ファクラーさん
他の海外メディアの支局は、何度も当時の安倍首相の単独インタビューをしていました。私は本社から「安倍首相の単独インタビューを取ってこい」と言われたことは一度もありません。
在ニューヨーク日本領事館が本社に、「東京のファクラー記者が日本政府に批判的な記事を書いた」と抗議したことがあります。私は本社から非難されるどころか、「プレッシャーに負けずによくやった」と言われました。 (※注) これはおそらく、官邸 → 外務省 → 在米大使館 → 在ニューヨーク領事館の 経路で指令があって抗議したものでしょう。
――日本とはまったく違いますね。
双葉社から10月末に『吠えない犬――安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール』という本が刊行されていました。単行本ソフトカバー344ページ、1320円。著者は元ニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーさん。
この本のことを文筆家・山崎雅弘さんのツィッターで昨夜知ったばかりで、私はまだこの本を読んでいません。
山崎雅弘さんのツィッターは、しんぶん赤旗日曜版12月20日号に掲載されているマーティン・ファクラーさんのインタビュー記事から一つの事実を伝えています。
それは、麻生政権の時の露骨な報道統制の証言です。報道統制は安倍政権時代に入ってから露骨になっていますが、麻生政権の時も既にそうであったのかと驚きもし、さらにその圧力が外国の報道陣にまで加えられていたという証言に、あらためて報道圧力の浸透ぶりの深刻さに目を見開いたしだいです。
たしか麻生太郎氏の首相時代はアニメが好きだと言って秋葉原あたりで若い人たちのごきげんとりに笑顔を振りまいていたはず。その裏でこういうことがあったのですね。
テレビ報道はすでに政権翼賛状態一色になっていて、かろうじて報道番組らしさを保っているのはTBS系列土曜日の「報道特集」ぐらいでしょうか。
麻生太郎、安倍晋三、菅義偉‥‥。ファクラーさんが「中国と同じか」と言ってますよ。
さて、山崎雅弘さんのツィッターにはしんぶん赤旗のインタビュー記事のカット写真が載っていて、マーティン・ファクラー元NYタイムズ東京支局長の証言を読み取ることができたので、その部分を次に記します。