2020-06-05
最高検が昨秋から広島地検で進めてきた 河井克行前法相・河井案理議員の公職選挙法買収違反捜査の経緯
2021-05-21
自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(上)
最高検が昨秋から広島地検で進めてきた 河井克行前法相・河井案理議員の公職選挙法買収違反捜査の経緯
2021-05-21
自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(上)
前回(上)の記事では、参議院選挙広島の趨勢の移り変わりを見ました。今回はまず、直近の第48回衆議院小選挙区広島 2017.10.22.投開票になる当選結果を見てみます。
<第48回衆議院議員選挙 広島県小選挙区 当選結果> 2017.10.22.投開票
(獲得票数) (当時年齢)
広島1区 岸田文雄 自由民主党 113,239票 男60歳 岸田派
広島2区 平口 洋 自由民主党 96,718票 男69歳 竹下派
広島3区 河井克行 自由民主党 82,998票 男54歳 安倍シンパ
広島4区 新谷正義 自由民主党 64,911票 男42歳 岸田派
広島5区 寺田 稔 自由民主党 86,193票 男59歳 岸田派
広島6区 佐藤公治 希望の党 85,616票 男58歳
広島7区 小林史明 自由民主党 110,547票 男34歳 岸田派
広島は池田勇人、宮澤喜一と二人の総理大臣を輩出しました。池田勇人元総理に始まる宏池会(岸田派)が衆議院7小選挙区7人のうち4人、参議院選挙区4人のうち2人と6人の国会議員を擁している広島県は宏池会王国だと、2019.5.12 20:22 産経新聞が伝えています。宏池会の盟主は、安倍首相(2019年当時)から総理総裁の禅譲を待ちつづけてきた岸田文雄自民党政務調査会長(2019年当時)です。
■安倍晋三前首相は河井克行氏を重用する関係
しかしこの宏池会王国の中に、安倍シンパである河井克行衆議院議員がおりました。
・2007年(平成19年) 第1次安倍改造内閣で法務副大臣に就任
・2007年(平成19年) 福田内閣で法務副大臣に再任
・2011年(平成23年)鳩山邦夫の「きさらぎ会」に参加、同会幹事長
・2012年(平成24年)9月 自民党総裁選、安倍晋三推薦人に名を連ね、
票とりまとめに奔走
2015年9月にきさらぎ会が東京都内で安倍首相(当時)を招いて激励会を開いたことがあります。河井克行氏はその様子を伝えるフェイスブックに「活動方針は安倍総理、菅官房長官を支えること」と書きこみました。
・2015年(平成27年)第3次安倍第1次改造内閣で内閣総理大臣補佐官
・2017年(平成29年)自由民主党総裁外交特別補佐に就任
・2019年(令和元年)9月11日 第4次安倍第2次改造内閣法務大臣
・2019年(令和元年)10月31日 法務大臣辞表提出、受理
安倍晋三首相(当時)や菅官房長官が河井克行氏を重用する理由の一端を毎日新聞 2020.6.18.21:55 が次のように紹介しています。
――(毎日新聞記事)―きさらぎ会会長を務めた故鳩山邦夫元総務相らとともに、安倍首相が党総裁に返り咲いた2012年の総裁選で票のとりまとめに奔走し、「首相はきさらぎ会に恩義を感じている」(自民中堅)とされる。2017年12月の忘年会では、あいさつした首相が「きさらぎ会にとってはゲストだけれど、自分はこのきさらぎ会の会員です」と持ち上げてみせたほどだ。
■2019年7月参院選 安倍―菅―二階ラインが動く
■宏池会王国斬りこみ隊長は河井克行氏
安倍晋三前首相は現職総理当時、一貫して、岸田文雄氏の「次期総理禅定期待」をくすぐって手なずけてきました。しかし2019年7月の参院選では方針を変えて、岸田氏の本城広島に斬りこみました。
参院広島選挙区の自民党得票数は固く見て50万票~55万票です。党本部は広島の参院候補を従来の1人に加えてもう1人増やせると見こみました。2人候補でしっかりやれば得票数も増やせるので、広島2人選挙区を自民党で独占も可能だ、と。
しかし、自民党広島県本部の猛反発が止みません。自民党1人、野党1人の当選で安定してきた広島選挙区です。2人立てれば、1人が落選する可能性が高い。参院広島選挙区では候補を2人に増員して1人落選した過去の経験がありました。
しかし、党中央の2人候補選挙戦の計画は変わりません。安倍首相(当時)の決意は固い。広島県本部の反対なんぞ相手にしません。溝手は落ちてもいい、という意思が見えます。
安倍首相(当時)は河井克行氏を見こんでいました。広島3区での衆議院議員歴は長く外交委員長など議会活動の経験も豊富であり、総理補佐官、総裁外交特別補佐も務めた。宏池会王国の中にあって、頼りになる安倍砦でした。2人目の新人候補を、党本部は広島県議経歴を若くから重ねた河井案里氏に決めました。
安倍首相(当時)主導で、常から交流のある河井克行氏の奥さんである広島県議案里氏に決まったことに菅官房長官(当時)も良い候補を得たと思ったでしょう。二階自民党幹事長は、安倍さんのやることに口出しはしないという立ち位置です。
しかし、当選後の河井案里氏は二階派に入りました。河井克行氏の二階幹事長への気づかいと、安倍シンパという自分の立ち位置に対して保険的なバランスをとったのでしょう。
宏池会王国への斬りこみであり、広島県本部が溝手顕正陣営一本に固めている選挙情勢です。河井案里陣営は現地党員・議員の助けが得られず、安倍首相(当時)の強い後押しを心の支えとして選挙戦に乗り出しました。
しかし朗報もありました。広島県連の助けを得られないという困難に対して、1億5000万円という、これまでに聞いたこともない破格の党資金を受けることになったのです。選挙戦終盤にはさらにもう一つ、公明党票は河井案里陣営に向けられるという情報が流れました。 (次回につづく)