川本ちょっとメモ

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自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(下)

2021-05-30 17:45:07 | Weblog




■岸田派の根拠地を切り崩す
前記事(上)2021-05-21付、(中)2021-05-23付、の国政選挙結果を見れば、広島県が自民党岸田派の根拠地であることがわかります。

そして参議院広島選挙区は岸田派現職、溝手顕正議員の定席です。

そこへ安倍晋三首相(当時)の肝いりで、2019年7月参院選広島選挙区に自民党新人候補河井案里氏を立てました。案里氏は広島県議からの転身。河井克行氏の妻です。河井克行氏は衆院広島3区選出の衆院議員。2015年総理大臣補佐官、2017年自民党総裁外交特別補佐、2019年参院選後に法務大臣、と要職を歴任しています。安倍首相が内輪と信頼する人です。

安倍晋三首相(当時)はそれまで、岸田文雄氏が総理総裁職の禅譲を期待するよう仕向けて岸田氏を手なずけてきました。しかし2019年7月参院選では岸田氏の根拠地を切り崩す方針に転換しました。

新人と現職溝手顕正との2人候補方針に、自民党広島県連は猛烈に反対しました。広島県連には、過去に2人候補を立てて1人落選という経験がありました。それでも党本部は2人目新人候補を広島に押しこみました。

広島県連は溝手陣営、安倍・菅に連なる公明党が河井陣営、という保守分裂選挙の図式になりました。



■自民党本部から河井陣営に党資金1億5000万円
自民党本部は河井案里氏を当選させるために、1億5000万円という異例破格の選挙資金を河井陣営に投入しました。溝手顕正陣営への支給はその10分の1、1500万円でした。これは安倍晋三総裁の指示、二階俊博幹事長の同意がなければできないことだいうのが定説です。

1億5000万円は、岸田派根拠地内で河井案里氏を当選させるための反対派調略買収に使われたことが、参院選後の検察捜査で次々と明らかになりました。


            《自民党資金 1億5000万円支給》 
          河井案里氏の党支部 河井克行氏の党支部        
   2019.04.15.    1,500万円
       05.20.    3,000万円
       06.10.    3,000万円     4,500万円
       06.27.               3,000万円



■河井克行氏は1億5000万円の選挙買収費消を否定、6月18日判決待ち
2021.1.21.河井案里氏に対して、東京地裁の公職選挙法違反(買収)有罪判決が出ました。認定買収金額は計160万円。

河井克行氏は、公職選挙法違反(買収)容疑に対する2021.6.18.東京地裁判決を待っている。これまでの公判で、地元議員やスタッフら100人に計約2900万円を配ったとされるが、1億5000万円資金の使途に関する疑惑については全否定しています。



■1億5000万円――岸田文雄氏が動いた、二階、安倍、甘利が反応した 
岸田文雄氏が2021年5月12日、河井案里氏公選法違反による議員失職に伴う4月25日参院議員再選挙で自民党が敗北した主因は政治とカネの問題だとして、二階自民党幹事長に面会しました。その中で、1億5000万円の使途について党内外に説明する責任があると、要請しました。

二階自民党幹事長は5月18日の会見で「党全般の責任が私にあるのは当然だが、収入、支出の最終判断をしており、個別の選挙区の選挙戦略や支援方針はそれぞれ担当で行っている」と述べた。(東京新聞 2021.5.18.17:47)

2018.10.2.~2019.9.16.の間、自民党選挙対策委員長を務め、河井案里陣営に入っていた甘利明氏は上の二階談話に対して、1億5千万円に関し「事件後の報道で初めて知った」と説明。「関与していない以前に、党から給付された事実を知らない」と語った。(東京新聞 2021.5.18.17:47)

甘利明氏は安倍晋三氏の側近だが、経済再生担当大臣当時の2013年11月に大臣室で50万円を受け取り、その他多額の授受が明らかになって大臣辞職をした実績があります。きれいな男ではありませんが、河井あたりのために金を運ぶことはするはずがない。

二階氏は使途をまったく知らないわけがない。党務の最高責任者である幹事長なのだから、少なくとも1億5000万円の使途大綱の説明を受けて裁可したでしょう。しかしすべてを知っているはずもなく、1億5000万円疑惑の主犯ではない。主犯は安倍さんだと言いたいところでしょう。

つまるところ使途をすべて知っているのは現場を主宰していた河井克行氏であり、それをさせたのは安倍首相(当時)ということになる。河井克行氏はこれまでの公判で、1億5000万円の使途を話していません。安倍氏との間で何かしらの談合ができていると私は思います。

しかし河井克行氏は「河井案里選挙買収のために1円も使っていない」と公判で明言しています。(2021.5.18.20:16 毎日新聞)


■安倍前総理の総理辞任に残る不審
安倍前総理は、岸田文雄氏要請の1億5000万円疑惑に関する記者質問に無言で通り過ぎました。

そして、5月26日発売の「月刊HANADA」のインタビューで安倍晋三前首相は、「9月末に任期満了を迎える自民党総裁選に関し、菅義偉首相の再選を支持する考えを改めて示した上で、「ポスト菅」について、茂木敏充外相、加藤勝信官房長官、下村博文政調会長、岸田文雄前政調会長の4氏を順に挙げた。自身の再登板については「全く考えていない」と否定した」(毎日新聞 2021.5.27.東京朝刊)

ここで安倍前首相は性懲りもなく4番手に岸田文雄氏を上げて、また懐柔しようとしています。これは、岸田文雄氏が1億6000万円疑惑追及ののろしを上げたことに対する安倍前首相の消火反応です。

「河井克行氏の公判で明らかにされているばらまかれた金は、2900万円」と、どの報道も公判内容を伝えています。概略1億2000万円の使途が不明のままになっています。


2020年8月、安倍前首相の持病悪化による急な辞職には不自然なところがあります。

ブラジル五輪でマリオを演じた安倍首相(当時)が東京五輪を控えて投げ出すことは考えられません。

アベノマスクで笑い者になりましたが、安倍晋三氏の神経はそれでめげるほど柔くはありません。

2012年12月政権当時の看板公約である「物価2%上昇」が一度も実現できなくても、堂々と野党を批判しまくって長期政権を担当したお方の急な辞職には不審が残ります。

そして慶応病院による病状説明がありません。記者会見における診断書提示に基づく説明もありません。仮病辞職ではありませんか? 辞職の真の理由は何なんでしょうか?


6月18日の東京地裁判決の内容に注目です。 (この稿、終わり)

次回は、2019~2021の動きをタイムラインでまとめてみようと思います。
うまくいくかどうか。


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