前回と同じグラフを上掲します。出所は他サイト http://blog.monoshirin.com/entry/2017/10/12/184218 の記事で、これは前回記事のグラフ下にも記してあります。サイトのグラフと記事の作成主は弁護士で、このサイト記事を基にして「アベノミクスによろしく」という新書を出しました。
2016年度期中に名目GDP推計計算方法が変更され、これによってGDP推計額が「かさ上げ」されました。ここに数字の操作があると言います。
日本経済新聞 2016/9/15 19:25
内閣府は15日、12月に予定する国内総生産(GDP)の推計方法の見直しで、新たな基準年となる2011年(平成23年)の名目GDPが19.8兆円かさ上げされるという試算値を発表した。
新基準で推計した11年の名目GDPは491.4兆円となった。旧基準の471.6兆円より4.2%増えた。
政府は20年に基礎的財政収支の黒字化を財政健全化の目標に掲げている。推計方法の見直しでGDPが20兆円ほどかさ上げされれば、足元の赤字幅のGDP比率は見かけ上圧縮されることになる。
<名目GDP計算に細工があって実態より大きくカサ上げされている>
前回と同じ上掲グラフをご覧ください。オレンジ折れ線は新方式GDP計算法によるもの、青色折れ線は従来式GDP計算法によるものです。
「自民党 政見公約 2017」(以下「自民2017公約」と呼びます)のアベノミクス5年間の実績として、名目GDPが、① 過去最高 ② 50兆円増加、となっています。
その期間は、493兆円(2012年10-12月期) → 543兆円(2017年4-6月期)、と記されています。これは2012年度第3四半期→2017年度第1四半期のことです。
上掲グラフは年度単位で、2015年度までしか出ていません。従来式GDP計算法で公表されているのは2015年度までです。2016年度から新方式計算で公表されているので、グラフ対比が2015年度までとなっているのでしょう。
しかし、上掲グラフの従来式計算法「青線2015年度」は、過去最高ではありません。1995年度から2007年度までのどれよりも下位。なんと、13位です。
新方式計算法「オレンジ線2015年度」では第2位。第1位は1997年度。第3位は2007年度です。
新計算法で第2位、従来式計算法で第13位。この大きな差異にグラフ作成者が疑問を持ちました。計算法を変えると、なぜこんなに順位が変動するのか?
ほかに幾つものグラフを示しながらこと細かく検証している経過が、モノシリンの3分でまとめるモノシリ話に書いてあります。クリックしてぜひご一読していただくようお勧めいたします。
グラフ作成者は、安倍政権時代の成果を良く見せるために、「新計算法による名目GDPには細工が加えられている」と結論しています。
わたしは、次の項で言うように、以前に「成果数字の見せ玉工作」を検証したので、グラフ作成者の検証を信じるしだいです。安倍政権の発表数字には用心してかかる必要があります。
<2009年~2012年度のどん底GDPの主因はリーマン金融危機と東北大震災・原発事故>
安倍政権はどん底GDPの4年間を民主党政治の無能によるものと批判しています。しかしこれは、リーマンショックを契機にした世界金融危機の波及と、それにつづく東北大震災・福島第一原発事故を主因とするものです。
金融危機のあおりで景況が急落した年は、麻生内閣(自公連立)の時代でした。自公であれ、民主であれ、誰が政権を担当していても、どん底GDP4年間になっていたでしょう。経済環境は、そんな最悪の4年間でした。
→ 前記事参照 <2017衆院選> 安倍自民宣伝の「アベノミクス5年で名目GDP50兆円増加」は世界金融危機につづく東北大災害の「特別に不運なGDPどん底4年間」との対比である、誇れるものではない
その時代と比較して、GDP50兆増加と自慢するのは的外れです。しかも、その計算法に疑いがあるのです。
<選挙前に成果数字を水増しする>
2016年7月参院選。菅官房長官が2016.7.2.遊説先で「年金積立金管理運用独立行政法人は30数兆円の運用益を確保している」と言い、わたしは報道でそのことを知りました。同じ日の公明新聞でも同様の記事が載りました。
2016年は年初から東証株価が下がり続けていて、年金積立金の運用収益は約5兆円の赤字と報道されていました。参院選投票結果への悪影響を恐れた安倍内閣は、2016年度の年度実績発表を参院選投票後に延期しました。例年7月上旬のうちに発表されているにもかかわらず。
安倍内閣の運用実績として語れるのは、2016年7月時点で、2013年度~2016年度分の3カ年度。この3年分の運用収益は概算14兆6000億円です。この事情は、2016.2.11.安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入 運用の株式比率は20%から50%へ(4止)にくわしく書いております。
「30兆円以上」という数字は、安倍内閣以前からの累積運用収益かもしれません。その数字の由来はわかりませんが、いかにも安倍内閣による成果であるかのように「30兆円以上」の数字を語るのは、ダマシの手口と言えます。
この手口を追及するならば、政権側はこの数字は事実だと言うでしょう。しかし、選挙時の政見演説などで、あたかも自分たちの功績であるかのように語るのは、「ウソではないがダマシの手口」です。
<選挙前にはなぜか株価が上がり、選挙後に沈静し始める>
2016年7月参院選が近くなったころに、「株価が上がった」という新聞記事が多くなっていることに気がつきました。わたしは金融記事に注意を払っているわけではないので、わたしの目に入るきっかけは、新聞の一面に記事が出たり、ニュースサイトの上位に記事が出たりするときです。
それで注意が向いてみると、「株価が上がった」記事や分析記事が頻りに出てきます。それで注意を払って、株価の上下を追って調べてみました。
その結果、趨勢として、選挙が近くなると徐々に株価折れ線が上がり、選挙が終わると徐々に下がるという傾向が出ました。
選挙前に株価が上がり、選挙後に株価が下がる――という傾向について、このブログで2016.5.18.安倍首相は選挙直近になると「株高」対策を打つとして掲載しました。
きょうの毎日新聞(2017.10.20.)一面でも、「東証29年ぶり13連騰」と出ています。「上げ相場はまだ余力がある」とするアナリストもいれば、「官製相場の気配濃厚」とするアナリストもいます。しかし東証株価連騰も続きすぎですから、選挙が終われば相場も落ち着くでしょう。
ここでいう「官製相場」ということについていえば、そもそも安倍政権は、アベノミクス向けに株上げ相場を作る目的で、「年金積立金」の運用を国債主力から株式主力に転換させました。
(参照クリック)2016.2.11.安倍内閣の大罪 年金積立金を 「株高」 誘導に投入 運用の株式比率は20%から50%へ(4止)
年金積立金運用資産額は2016年度(平成28年度)末で、144兆9034億円です。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は世界最大級の日本政府系投資機関ですから、株価介入が時機に応じて行われているとみるのが常識というものでしょう。
一方、毎日新聞2017.10.20.朝刊の東証13連騰記事によれば、日銀が上場投資信託(ETP)を年間6兆円買っているという。また、経済同友会の小林喜光代表幹事が10月18日の記者会見で「かなりバブリーな方向に来つつある。(株高を)単純に喜べる状況ではない」と、語ったと伝えています。
選挙が終われば、これまでの安倍選挙と同じように、今の株高相場は沈静化していくにちがいありません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます