毎日新聞2010年2月6日朝刊、岩見隆夫さんのコラム「近聞遠見―政治家がうさん臭い」を転載します。
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年明けから約1カ月、くる日もくる日も<政治とカネ>で大騒ぎしたあとに、何が残ったのだろうか。政治不信というより、政治家不信である。
政治一般では焦点がぼやける。政治家という人間がどうもややこしい。
民主党の小沢一郎幹事長らの刑事処分が決まった4日夕、東京・内幸町のプレスセンターでは、<河野洋平さんのネジを巻く会>が催された。衆院議長2029日の最長記録をつくり、昨年引退した河野を慰労し励ます各界有志の会である。
現職政治家の姿は一人もなく、司会者は、
「時節柄、生臭くなるので」
と断ったが、参会者約100人の共通の気分だったに違いない。
政治家がうさん臭く感じられている。河野は冒頭にあいさつに立ち、
「これだけマスコミの鳴り物入りで登場した新政権が国民の期待にこたえていない。脱税をした人が率いている。納めずに何年もいた。その首相が『税金のむだ遣いをなくせ』と言っている。国民には不平、不満がたまっている……」
などと述べた。
鳩山由紀夫首相は、贈与税を払った、と言うかもしれないが、騒ぎが起きなければ、脱税が続いていたはずだ。なにしろ、母親からの贈与を知らなかったのだから。
憲法第30条には、
<国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ>
と定められている。
鳩山が、意図したかどうかはともかく、ある期間、納税義務を怠ったのは明白だ。
一方の小沢幹事長、政治資金規正法違反の容疑は残ったが、不十分で不起訴となった。
自民党の谷垣禎一総裁が、
「限りなく黒に近い灰色だ」
と言ったが、世間もそんな感じでみている。
脱税首相と容疑不十分幹事長にリードされる民主党は、どこに行くのだろうか。
――略――
鳩山と小沢はタイプがまったく違うが、2人はともに億単位のカネで国民の不信を買った。
「ご迷惑をかけた」
とわびるだけですむのか。
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