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「読書と日本人」 津野梅太郎

2021-10-29 | 読書

膝が痛くてどこへも行かず、誰とも会わないので最近はカフカの絵葉書と対話中。

2019年、プラハの、カフカが「変身」を書いた部屋で買った。

「変身」は、姑様の介護中により深く胸に落ちた。恐ろしくも残酷な作品。


先日、Eテレに出ていた著者は1938年生まれ。元気そうだった。元は黒テントの人。

ん?黒テントって?

黒テントはね・・・1960年代から70年代にかけてアングラ劇団の一つで・・・何というか・・・あとはそこら辺の年寄りに聞いてみてね。混とんとしてエネルギッシュで、その中から文化のアマルガムが生まれていて時代。懐かしいなあと、ばあちゃんは遠い目。

とはいえ、地方に住む若者には遠い都で、なんか面白そうなことやっているなあと好奇心をそそられるだけで実際見ることはなかったけど。

あとは雑誌の編集者に大学教授、図書館長などを歴任。


この本は日本人がどのように読書してきたかを、平安時代の更級日記からこの本が上梓された2016年の長きにわたって辿る通史の試み。

読書史・・・ありそうでなかったですね。初めて見た。

人は本を読む。読むけれどそのスタイルは様々。それをわざわざ書き残したりしない。当人にとっては当たり前の光景でそれが歴史の中でどう位置付けられるかなど、考えないので。

本は自分の部屋で一人で黙って読む。自分の部屋がない場合は人に邪魔されない場所でと言うことでしょうか。

同じ読書としても、紙が貴重で、自分のものにしてゆっくり読むためには原本を書写するしかなかった時代から、木版印刷へ、16世紀末に伝わった活字印刷(これは結局長続きしなかった)と飛躍的に発展し、一部の人から広く大衆へと読書習慣が広まったのが江戸時代。その流れがよく分かった。

また近代になってからの学校教育の始まり、大正時代の教養の大衆化、震災、戦争のあとの知的好奇心など、過不足なくよくまとめられている。

ところが20世紀も終わりになるころ、雑誌、書籍の売り上げが落ち始める。これは一時的な不況ではなく、社会の大きな構造変化。紙媒体のほかに電子本などが台頭してきた今世紀、読書を巡る環境も大きく変わってきた。

軽い本が大量に売れ、10年単位で少しずつ売れる堅い本は売れなくなって出版社、出版数も減り、図書館ですら知の砦であることを止めて、ベストセラー本をまとめて買って貸し出し、読まれなくなったら廃棄する形に替って行く。

知の退廃?著者ははっきりとは言ってないけれど、今のままではいけない、この自分も世の中も、という切実なものが日本人の中から失われたのかもしれない。知識を広げて現状を変えるヒントを探したいという気持ちが。

著者は電子媒体と紙媒体は互いを補いつつ、紙媒体自体がなくなることはないと結論付けている。

ネットで切れ切れの、刺激的な情報にさらされていると感性もささくれ立ち、落ち着いて考えられなくなるのでしょうか。ましてや個人が極論を発し続けることがお金になる時代、今回の結婚にまつわるあれこれがそれを象徴している。

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