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■【連載小説】竹根好助の経営コンサルタント起業8章 2 東京での実務に着手

2025-03-07 12:03:00 | 【連載小説】竹根好助の経営コンサルタント起業

  ■【連載小説】竹根好助の経営コンサルタント起業8章 2 東京での実務に着手  

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。慣れないニューヨークを中心としたアメリカでのビジネスですが、時として折れそうになってしまいます。そのようなときに、若い竹根の支えとなってくれたのが、本社で竹根をフォローしてくれるかほりでした。彼女の父親は地元の名士ということから、竹根などに娘をやるわけにはいかないと厳しかったのです。かほりと竹根の努力で、結局、父親は折れざるをえず、晴れて結婚が認められました。
 たった一人でニューヨークで苦闘してきた、若者、竹根好助(たけねよしすけ)も5年の任期を終え、東京に戻り、本社勤務に戻りました。5年という歳月で自分の置かれている立場が急激に変化してきたことを実感している竹根です。その最大の変化が、まさか自分の身に降りかかると思ってもみなかったヘッドハンティングです。

◆8章 半歩の踏み込み
 ニューヨークでの5年の任期を終え、東京に戻り、商社マンとして中堅どころに足を踏み入れた竹根です。東京本社勤務が始まったばかりというのに、ヘッドハンティングという、想定だにしなかった話が舞い込みました。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
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◆8-2 東京での実務に着手
 5年ぶりに東京に戻った竹根である。
 竹根は、海外営業部企画課の仕事にとりかかった。課長代理と言っても部下がいるわけではなく、自分ですべてのことをやらなければならない。
 まずは、自分の顕微鏡ビジネスの体験をヨーロッパに活かせないかと取り組み始めた。ヨーロッパの顕微鏡を扱っている、教材関連業者、理化学機器関連業者、医療機器関連業者などの、売り込み先リスト作りに取りかかった。JETROは、それらの情報の宝庫である。国立図書館にも行ってみた。東京タワー近くの機会振興会館も海外誌を含む最新の雑誌をそろえている。日比谷図書館を始め、各地の図書館もいろいろな情報が集まるので莫迦にできない。意外と資料が揃っていないのが、顕微鏡工業会とか理化学機器関連の協会などである。
 アメリカで広大な土地を飛び回り、走り回っていたので外回りは、苦にならなくなっていた竹根である。あちこちで資料を集め、整理しているうちに、情報収集のコツをつかめた。それが後に経営コンサルタントになってから、竹根の武器になることをそのときは知らない。
 それらの資料のコピー代は莫迦にならないが、領収書をもらえないことが多く、結局自腹を切ることになる。
 その資料の山を自宅で整理を始めた。いつかの晩のように、かほりがそばに来て「何から手伝ったらいいのかしら?」と手伝う姿勢である。一日の家事を終わって、ホッとするひとときだろうに、竹根の仕事を無視できないようである。人が何かをやっていると、自分だけのほほんと過ごしていられない性格でもある。
 竹根は、それが何の資料なのかを説明した。
「国別、業種別、規模別などの項目を基本にして、一つのリストにしてはどうかしら」
 さすが、由紗里が生まれるまで竹根の秘書をニューヨークでやってきただけあり、竹根が何を求めているのか、理解が早い。横罫の入った用紙に先ほどの項目を記入して、一覧表を作り始めた。それにデータを転記してゆく。二人で、黙々と続く作業は毎夜のように行われた。
 竹根は、できたリストから活動をはじめた。相手が、興味を持つかどうか、流通チャネルをどの段階にしているのか、知りたいことが全然解っていない。できたリストをもとにアンケートを採ってみようと考えたが、その送付先のリストはかほりの夜なべ仕事に使われている。
  <続く>

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