ごっとさんのブログ

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沖縄の海洋生物から結核などの新薬候補発見

2017-12-26 10:43:08 | 化学
沖縄を中心に海洋生物資源の収集をしているベンチャー企業と北里大学薬学部の研究チームは、「非結核性抗酸菌症(MAC症)」や結核の治療で使う新薬候補となる化合物を、沖縄本島北部の海などから採集した海洋生物から発見したと発表しました。

このチームは約10年前から、感染症やガン関連治療薬の候補となる化合物に関する研究を進めており、今回MAC症の治療薬となりうる化合物を発見しました。

MAC症はあまり知りませんでしたが、結核に似た呼吸器感染症のようです。重症化した場合は死亡する可能性もあり、国内の患者数は年々増加傾向にあるようです。

今回発見した化合物や生産する海洋生物の詳細はわかりませんが、海洋生物というのは未知の化合物の宝庫と考えられます。このブログでは書いたことがなかったような気もしますが、私も2年間ですが国が出資している海洋系の生物の研究所に出向していたことがあります。

ここで海洋生物についていろいろ勉強したのですが、非常に面白いものでした。私の研究室は、主に海藻の表面に生育する微生物が作り出す有用物質の探索を行っていたのですが、海洋生物自身を目的とする研究室もありました。

その為に海外も含む色々な国から、海藻やカイメン、イソギンチャクなどを採取したいのですが、問題は「生物多様性条約」でした。面白いことに海は世界中がつながっているということで、海外で採取した生物を持ち込むことには何の規制もないのですが、採取量が10gまでと決められていたのです。

例えばカイメンなどを分析すると多くの興味ある物質がありそうなのですが、それから化合物を取り出すためには、500gから1Kg程度ないと難しいのです。そのため生物多様性条約を批准していないフィジーやパラオといった国によく出かけました。

しかし実際に面白い化合物が見つかっても、実用化には大きな課題があります。例えば海藻中の成分であれば、ある程度の大量増殖は可能かもしれませんが、カイメンなどでは大量に増やすという手法はできていないと思います。

実用化には数キロ以上の化合物を確保しないといけないのですが、そのためにはカイメンを数百トン育てる必要が出てきます。この辺りが海洋生物には面白い化合物があるものの、なかなか実用化まで行かない理由となっています。

今回発見した化合物は、沖縄の海から取れる海藻やカイメンから抽出したもので、MAC症の病原菌の生育を阻害する作用を確認したとありますが、今後動物実験などに向けてその物質の大量確保ができるかどうかが問題かもしれません。