ごっとさんのブログ

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腎不全を助ける腎臓再生

2018-09-02 10:21:24 | 健康・医療
世界の腎臓病患者は8億5000万人に達し、うち腎不全で透析療法や腎移植を必要とする患者は530万~1050万人と推定されるという報告が国際腎臓学会で発表されました。

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって発症リスク高まる慢性腎臓病は、進行し末期腎不全になると、体内の老廃物を充分に排出できず、人工透析や腎移植のいずれかが必要になります。

日本の現状も厳しく、透析医療の進歩にもかかわらず、約33万人が週3回、4時間程度の透析治療を受けています。1級障碍者に認定されるため医療費は月1万~2万で済みます。しかし透析のため病院に通い時間を拘束されるなど、患者のQOLの著しい低下が強いられています。

また腎移植の希望者が1万人を超える一方で、ドナーは圧倒的に不足しており、順番がいつになるかわからないようです。

こうした国内外の深刻な状況を打破すべく、研究を進めてきたのが東京慈恵会医科大学の研究グループで、昨年11月にはラットによる腎再生に成功しました。これまでその構造の複雑さのために再生は不可能とされていた常識を覆したユニークな研究です。

その方法は患者のiPS細胞から「腎臓の芽」となる前駆細胞を作製します。また遺伝子操作したブタの胎児から腎臓が育つ場所を取り出しておき、その中で前駆細胞を育て、患者の体内に移植するというものです。

あとは薬剤でブタ由来の前駆脂肪を除去すれば、100%患者由来に置き換わった腎臓の芽が、成熟して腎臓になるわけです。尿が作られるということを確認して尿管とつなぎ、膀胱から尿が出るようになれば再生完了となるわけです。

移植手術は腹腔鏡で、極小の腎臓の芽を腹部大動脈の近くに貼りつけるだけという簡単なもので、100万円程度の経費を想定しているようです。

現在透析患者一人に対してかかる医療費は、年間500万円で、それを国がほぼ負担し、その額は実に1兆4000億円以上にまで膨らんでいます。これを削減することは大きな課題ですが、今回の研究はまだラットで成功したにすぎず、臨床試験までもっていくにはかなり時間がかかりそうです。

研究グループは高品質の前駆細胞を作れる施設を持っている大手製薬会社と提携を進めていますが、すぐに人に応用するのは難しそうな気がします。ただ今回のブタの胎児を使って腎臓の前駆細胞を作るという手法は、複雑な臓器形成のある方向性を示したものと思われます。

研究グループは海外での臨床試験も視野に進めているようですが、一つの臓器をiPS細胞から作り出すには、まだまだ色々な問題が待ち構えていそうな気もします。