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亜鉛不足症状のメカニズムを解明

2018-09-24 10:29:46 | 健康・医療
京都大学は、亜鉛不足によって生じる様々な症状のメカニズムの一部を解明したと発表しました。

亜鉛不足が細胞外ATP(アデノシン三リン酸)代謝を遅延させ、細胞外でのATPの蓄積と、ATPの分解産物であるアデノシンの減少を引き起こすことを明らかにしました。

亜鉛欠乏症という言葉はたまに聞くことがありますが、それほど身近なものとは思っていませんでした。亜鉛欠乏症では、味覚障害や貧血、口内炎、皮膚炎、脱毛症、食欲低下、発育障害(小児で体重増加不良、低身長)、不妊症、などのうち一つ以上の症状が現れるとされています。

亜鉛というのは私にとっては時々試薬として触媒などに使う金属ですが、かなり毒性の強いものです。実際に実験に使うときは、手に付いたりしない様かなり注意を払っていましたが、こういった毒性の強いものが微量金属として身体に必須であるというのは面白いものです。

亜鉛は、生体内で様々なタンパク質と結合して機能を発揮します。その1つに、特定の酵素の活性中心に配位して酵素反応を触媒する、触媒因子としての機能があります。こうした酵素は亜鉛要求生酵素と呼ばれ、さまざまな代謝経路に点在しています。

一方生体において細胞外ATP代謝は、炎症などのシグナルに関わる重要な代謝経路として機能しています。細胞外へ放出されたATPは種々の分解酵素によりADP、AMP、アデノシンまで分解されますが、ATPとADPは炎症など、アデノシンは抗炎症などのシグナルを細胞膜に発現した受容体を介して誘発します。

分解酵素や受容体の異状によって細胞外ATP代謝が破綻すると、炎症や創傷治癒遅延などの症状を引き起こします。

研究グループは、亜鉛欠乏症による症状と細胞外ATP代謝の破たんによる症状は共通点が多いこと、細胞外ATP代謝に関わる酵素の多くが亜鉛要求性酵素であることに着目しました。

亜鉛の欠乏がこれら酵素活性を低下させることで細胞外ATP代謝が弱まり、これが亜鉛欠乏症の症状に関連していると仮定しました。研究の結果、培養細胞の膜画分、ラットの血漿において、亜鉛欠乏では各酵素の活性が低下し、細胞外にATPが蓄積しこれに伴ってアデノシンの産生が低下することを示すことができました。

またラットでの実験では各酵素活性の低下は、わずか数日の亜鉛欠乏食を摂取しただけで生じ、亜鉛を充分含む食事を1日摂取しただけで劇的に回復しました。

この成果は、亜鉛の機能について詳細な知見が解明される第一歩になりうるとしていますが、基礎研究としては面白いのかもしれません。