ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

ノーベル賞医学生理学賞決まる

2019-10-10 10:34:46 | 時事
今年もノーベル賞の時期となり、医学生理学賞と物理学賞が発表されましたが、残念ながら日本人の連続受賞とはなりませんでした。しかし昨夜化学賞が日本の吉野氏の受賞が発表されました。

私が注目していた医学生理学賞には、「細胞の低酸素応答」の解明の業績から欧米の3氏が選ばれました。この細胞の低酸素応答というのは、私もよく分からない分野なのですが、色々な報道から概略をまとめてみます。

人間は呼吸するたびに、食物をエネルギーに変換するうえで必要な酸素を細胞に供給しています。その際の代謝を調節するために、細胞は利用可能な酸素の量を検知しているはずで、これは科学者には以前から知られていることでした。

細胞は効率よく安全に燃料を燃やし、損傷した箇所に新しい組織を構築したり、肝細胞や神経細胞はその機能を果たし、37℃の適温を保っています。

しかし20世紀の終わりに近くなるまで、その背後にある仕組みは謎でした。その仕組みを解き明かしたのが、今回受賞した3人の科学者です。

細胞が利用可能な酸素の量を検知して順応するメカニズムが明らかになったことで、生命活動の極めて基本的なプロセスの背後にある構造が明らかになりました。これは貧血症やガンなどの疾病に対処できる可能性のある有望な新薬の開発にも道が開かれたことになります。

1990年代から2000年代を通して3人は、低酸素誘導因子(HIF)と呼ばれる酸素に敏感なタンパク質の作用の解明にそれぞれ取り組んでいました。

こうしたなかで解き明かしたのが、細胞内においてタンパク質を分解する酵素複合体「プロテアソーム」が、高酸素状態においてはHIFを分解するメカニズムでした。

プロテアソームは高酸素状態においては、HIFを分解する作用を持ち、一方で酸素レベルが低下すると今度はHIFを増やしてホルモンの産生を促進し、赤血球や血管を作るように促します。

この常にHIFを作り、必要でないときは分解してしまうというのは、人間というより生体では珍しいことです。生命は合目的性が強く、通常は必要なときに作り出すという機構を持っています。

ところがHIFを常に作っているということは、それだけ重要な役割を持っていることの証かもしれません。彼らが解き明かした分子反応経路に細工する薬剤は、体内の赤血球の活動を促進して貧血を治療する薬として、すでに中国で承認されています。

ほかにも同じ発見に基づき、ある種のガンの治療薬として開発中のものもあります。腫瘍は分裂しすぎて酸素レベルが低くなりますので、一部のガンは成長するために必要な血管を作り出すようこのHIFのシステムを利用しています。

こういったことが「細胞の低酸素応答」となりますが、この発見がどのように応用されていくかは今後の課題かもしれません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿