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液体なのに結晶のような酸化物

2020-06-29 10:25:12 | 化学
希土類元素のひとつであるエルビウムの酸化物(Er2O3)は、高温で溶けて液体なっても原子が規則的に並んでおり、結晶のような構造をしていることが分かったと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが発表しました。

国際宇宙ステーションでの実験や大型放射光施設での分析などによる成果で、ガラスに関する理解や、スマフォの高性能ガラスの開発などに幅広く役立つ可能性がありそうです。

人類はガラスを紀元前から加工して利用しています。主に酸化物が原料で、原子や分子が結晶のように規則正しく並ばず、不規則なまま冷えて固まったものです。原料を加熱し液体にしてから急冷して造りますが、この時にガラスになる物質と結晶になる物質の違いは、未だによく分かっていません。

これを原子や電子のレベルで解明することが大きな課題となっています。従来の研究はガラスになる酸化物液体の構造解明が焦点でしたが、グループはガラスにならないことが分かっている液体に注目し、そのひとつであるEr2O3の原子配列や電子状態の解明を試みました。

Er2O3は融点が2413℃と極めて高く、液体だと容器に反応するなどして実験が難しいものです。そこでグループはISSの日本実験棟「きぼう」にある分析装置で、静電気でEr2O3を浮遊させて密度を測定しました。

またスプリングー8の高エネルギーX線回析の測定装置で試料ガラスを浮遊させ構造を測定しました。その結果Er2O3の液体はガラスにならない他の液体に比べ、結晶のように原子配列の規則性が極めて高いことが分かりました。

また浮遊炉で得られた密度のデータにコンピューターシミュレーションを加味して三次元モデルを作ったところ、原子の集合体がガラスにならない他の高温液体には見られない歪んだ状態になりました。

さらにシミュレーションや先端数学に基づいた解析で、Er2O3の液体の特徴が位相幾何学的に結晶に似ていることなどを解明しました。

この成果で得られた高温液体の知見は、ガラスができる条件の解明や、高温液体であるマグマから鉱物が形成される過程、つまり地球の成り立ちの理解につながるようです。

こうした基礎科学のほか、スマフォの画面のカバーやレンズのガラス、耐熱セラミックスの高性能化など、材料の革新にも道を開く期待があります。

こういった分野は私は不得意であり、あまり良く理解できないのですが、無重力の実験設備がこういった研究にも役に立つというのは、面白い実験結果といえるのかもしれません。


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