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認知症の治療薬になるのか

2016-01-12 10:25:39 | 健康・医療
近年認知症の患者が増加しており、65~70歳以下でも15%が認知症といわれています。私もこの歳に入っていますが、なんとか85%のほうにいるようです。

この50%がアルツハイマー型で、原因はアミロイドベータタンパク質の蓄積と言われています。一般の認知症の原因物質も色々あげられていますが、最近の研究ではタウというタンパク質の蓄積説が有力のようです。タウは微小管安定化因子といわれ、神経細胞の骨格形成に役立っています。これがなくなることで神経細胞が死んで脱落し、脳が委縮して物忘れなどの症状が出ると考えられています。

タウの凝集過程を試験管内で調べると、タウタンパク質がシステインというアミノ酸と結合し、凝集が始まるようです。この凝集した顆粒状のものがさらに結合してタウ線維となるとされています。したがってこのタウに結合し、凝集を妨げることができれば、認知症の治療薬となりうるということで、理化学研究所のグループがスクリーニングしました。

その結果3種の候補化合物が見つかり、そのうち2種が分子内にカテコールという構造をもつ化合物でした。このカテコール類は脳内物質にも多く存在し、ドーパミンなど色々な化合物が知られています。天然にもかなり存在し、例えばお茶の成分であるカテキンなどがあり、抗酸化物質としての性質をもっています。

このカテコール化合物が、タウの凝集を抑制するメカニズムを調べたところ、最初のステップであるシステインとの結合を妨げることがわかりました。これはカテコールの酸化体が、システインと結合するためのようです。さらにシステインと結合したタウタンパク質のオリゴマー形成も防ぐことがわかりました。そこで他の研究機関とも共同で、このカテコール類の中からタウ凝集抑制剤を探し、イソプロテレノールという薬を見出しました。

この薬は不整脈や気管支喘息の治療薬として使用されており、その安全性なども確認されています。このイソプロテレノールを通常3か月で神経細胞が減少するモデルマウスに餌に混ぜて与えたところ、神経細胞は減少せず、機能低下や異常行動も出なかったということです。この薬が人間の認知症の治療や予防に有効かは、まだまだ時間がかかると思いますが、今後の研究に期待できそうです。

たぶん現在はどこの製薬メーカーも、認知症の治療薬探しをしているはずですが、こういった既存のものからだけではなく、新規物質であればより強い効果が期待できるかもしれません。

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