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日本の食文化の中心である「旨味」のはなし

2022-03-16 10:27:15 | グルメ
私は若いころから薄味が好きでしたが、塩味などの濃いものが嫌いというよりは、出汁の「旨味」を好んでいるのかもしれません。

日本人は昔から昆布や鰹節、シイタケなどからとっただしを料理に使ってきました。1907年に昆布の出汁に含まれるグルタミン酸がこの成分であることを発見し、それを旨味と名付けました。

この旨味は日本人にとっては基本的な味のひとつですが、海外では甘味、苦味、酸味、塩味のような基本味と捉えられていませんでした。それが変わり始めたのが、2000年ぐらいからの味覚受容体の発見です。

ヒトの場合は主に舌にある味蕾によって物の味を感じます。味蕾とは味を感じる味細胞が数十個集まっている器官ですが、この味細胞が味覚センサーとして機能するのは、そこにタンパク質分子である味覚受容体があるからです。

味覚受容体は味を構成する成分に反応する分子ですが、ひとつの味覚受容体が様々な味全てに応答するわけではなく、甘味には甘味受容体、苦味には苦み受容体と役割が決まっています。

こうした解析が進むなかで、T1R1/T1R3と呼ばれる味覚受容体が、ヒトでは旨味成分であるグルタミン酸によって強く活性化されることが2002年に分かりました。つまり旨味とは塩味などが混ざった味ではなく、特定の旨味受容体が応答する基本味であったことが判明しました。

昆布の旨味成分であるグルタミン酸はアミノ酸の一種ですが、鰹節の旨味成分はイノシン酸、干しシイタケの旨味はグアニル酸で、これらは核酸系の旨味物質であるヌクレオチドという化学物資です。

こういった核酸系の旨味成分は旨味受容体において、グルタミン酸などのアミノ酸とは異なる部位に結合し、受容体の活性を増強することが分かりました。

この分子メカニズムが解明されたのは2008年のことですが、日本人はこの現象を経験から知っており、合わせ出汁という調理法を古くから用いていました。

味覚受容体が発見され、その遺伝子情報が分かったことで、培養細胞にその遺伝子を導入することが可能になり、味覚受容体がどのような物質に反応するかという研究が加速しました。その結果ここ20年ほどの間に味覚のメカニズムが急速に解明されたのです。

この旨味受容体の解明は、味覚の基本味に旨味を加えただけではなく、生物の進化の解明にもつながっているようです。この味覚の変化によって食性が変わり、新たな進化をした生物は非常に多いと言われています。

私はこの日本の食文化であるだしを取るという調理法から出てきた旨味が、umamiとして基本味に認められたというのは非常にうれしいような気がしています。


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