ごっとさんのブログ

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認知症の臨床試験で悪化抑制を確認

2022-10-14 10:34:25 | 
最近テレビの情報番組を見ていたところ、日本の製薬会社のエーザイがアルツハイマー病の臨床試験において、症状の悪化を抑制する効果を確認したというニュースを報じていました。

ここでは患者の家族会などが希望が持てるというコメントを出していましたが、私は若干疑問を持っています。ここ20年ほどで欧米各国で100を超える治療薬の臨床試験が行われ、全てが失敗しています。

この治験薬の大部分がアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβを除去するというメカニズムの薬剤でした。こういった臨床試験がうまくいかなかった理由は色々挙げられていますが、そのひとつが発症のメカニズムにあります。

アルツハイマー病は発症する20年も前からアミロイドβの蓄積が始まり、これによって脳細胞が破壊されることによって発症します。この段階で治験薬を投与してアミロイドβが除去できたとしても、それまでに死滅した脳細胞は復活しませんので、症状の改善が見られないのです。

もうひとつが認知症の診断方法です。例えば血圧が160で高血圧とか、酸素飽和度が94%で低いといったような数値化、あるいは客観的な指標というものがありません。もちろん認知症テストなどといった判定法はありますが、どの程度なのかを測ることはできません。

そこでどうしても医師の属人的な判断が必要となってしまうのです。治験に参加している患者が、治験薬を投与されてから半年後に認知症が良くなったのかあるいは進行したかを判断するのが非常に難しいようです。

また認知症自体がいわゆるまだらボケとなり、ある時は非常にしっかりしたり、逆にボケたりするということを繰り返すという難しさもあります。この辺りの課題をエーザイがどうやって克服したのかよく分かりませんでした。

ここでは日本や欧米、中国のアルツハイマー病の早期患者1795人を対象に、治験薬である「レカネマブ」を投与したグループと偽薬のグループを比較しています。

投与から1年半後、レカネマブのグループでは、記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制されたとしています。問題はこの抑制率の27%という微妙な数字もありますが、このレカネマブが抗体医薬であることから来る薬価の問題です。

抗体医薬であまりにも高い薬価で問題となったオプジーボは、当初1カ月の薬価が300万円で、年間3800万円となっていました。これが数年後には年間1090万円まで下がりましたが、これでも途方もない金額です。

レカネマブの薬価はまだ決まっていないようですが、抗体医薬である以上安価にするといっても限界があるでしょう。認知症患者400万人に投与できる価格になるとはとても思えません。

たとえ承認されたとしても、一部の特殊な患者に投与するだけであるのなら、治療薬の開発とはとても言えないような気がします。


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