ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

「ガンが消える」を信じてしまう患者

2019-08-26 10:28:39 | 健康・医療
東京の健康食品販売会社の社長ら4人が、「ガン細胞が自滅する」などと効能を宣伝し、ガン患者に健康食品を高額で販売してとして逮捕されました。

同社はフコダインという成分が含まれた原価3000円程度の商品を5万円を超す値段で販売していたようで、3年間に28億円余りを売り上げていました。このようにガン患者を相手に医学的根拠のない治療を高額で提供し、利益を上げる業者は後を絶たないようです。

本来数々の臨床試験で効果が立証されている標準治療は、日本では保険適用されており、自己負担額はそれ程高くないようになっています。

それでも「藁にも縋る思い」で高額で多くはあまり効果のない医療に手を出す患者が多いのは、医師・医療従事者と患者とで大きな食い違いがあることが原因のような気がします。

例えば10年前では、切除不能なステージ4の大腸ガンの生存期間の中央値(いわゆる余命)は約8か月とされていました。それが年々治療が進歩し、いまでは生存期間中央値が2年半に到達するようになっています。

これは医師や研究者から見れば飛躍的な進歩ととらえるかもしれませんが、患者から見れば若干生存期間が長くなっただけで、大きな差はないと感じるでしょう。患者は標準治療によって生存期間を延ばすだけではなく、「完治」を望むものです。

そこで高いお金を払えば、もっと良いサービスが受けられるのではと、民間療法などに手を出してしまうことになります。この辺りがガン治療の難しさかもしれません。

このブログでも書いていますが、ガンは遺伝子が変異した細胞の病気といってよいでしょう。遺伝子のどこに変異が起きるとガン化するかは、特殊な部位があるわけではなく、様々な遺伝子の色々なところの変異でガン化してしまいます。

従ってAさんとBさんが肺ガンになったといっても、変異した遺伝子の部位が同じことはまずありません。単に肺細胞がガン化したという事であり、AさんとBさんは全く異なるガン細胞という事になります。

つまりどんなに良い抗ガン剤が開発されたとしても、効く人と効かない人が出てきてしまうわけです。逆に冒頭書いたフコダインのようなほとんど効果がない物質でも治ることがあるという、おかしな現象が起きてしまうのがガンと言えます。

現在はガンの遺伝子を調べ、効く薬を探すというような手法も始まっているようですが、全てのガン患者に適応するのは難しそうです。

私はガンになったらあきらめることにしていますが、ガン治療の難しさが民間療法が支持される根底にあると思っています。

てんかん治療の最前線

2019-08-24 10:25:30 | 健康・医療
大脳の過剰な興奮などで起きる「てんかん」の症状を改善するための選択肢が広がっています。

私はずいぶん前の話ですが、研究所の後輩が昼休みにてんかんの発作を起こし、あわてて救急車を呼んだことがありました。この後輩はその後発作が出ることもなく、突発性だけだったようですが、突然意識がなくなるというのは怖い病気です。

現在は埋め込み型の電気刺激装置で自動で発作を緩和できるようになり、遠隔地でも専門医にオンラインでの外来を受けることができるようになってきました。

100万人いるとされる患者の3割は薬が効きにくい難治性と見られています。埋め込み型の電気刺激装置は、左胸に埋め込む小さな装置から首付近の迷走神経に電気で刺激を与え、発作の頻度や症状を緩和します。

迷走神経刺激療法として2010年に保険適用されており、抗てんかん薬で発作を抑えられない患者や開頭手術が困難な患者などが対象になっています。

自治医科大学の調査によると、約360人の患者のうち、治療を始めて3年間で発作頻度が半分以上減った人が6割近くとなっています。装置は近年改良され、発作を検知して電流を流す「オート刺激モード」搭載のタイプが2017年に登場し、利便性が高まっています。

2010年以降に国内で埋め込み手術を受けたのは延べ1800人で、この療法は特に年齢制限がなく、装置を埋め込む手術のリスクも比較的低いとされています。

東京医科歯科大学や名古屋大学の研究チームは、発作の予兆をセンサーが縫い込まれた下着で検知し、スマートフォンで伝えるシステムの開発を進めています。胸部のセンサーが発作前の心拍リズムの乱れから予兆を検知し、情報をスマフォのアプリに送りアラーム音などで知らせて利用者が発作を予測します。

研究チームによると、臨床研究では早いケースで発作13分前から予兆が検知できました。発作を予測できれば、意識を失った場合のケガなどを防ぎ、生活の質を高めることができるとしています。

自宅で手軽にできる食餌療法なども推進されているようです。静岡神経医療センターは、ホームページに「てんかん食」を手軽に作れるレシピを紹介しています。てんかん食は、抗てんかん作用を持つケトン体を体内で生成するため、高脂肪低糖質の食事をとる治療法です。

同センターは退院した後も食餌療法を続けやすいようにと、2016年から公開を始めています。てんかん治療はもちろん薬剤が中心で、非常に良い効果を出す薬も開発されています。

それでもこういった薬剤療法が効かない患者もおり、色々な療法が試みられ、発作の予防や予知がかなり進んできたようです。

「正しい医療は無い」は本当か

2019-08-23 10:27:54 | 健康・医療
病院にかかっているから安心、検診を受けているから安心と思っている人は多いと思いますが、この安心感は虚像でしかないという説があります。

収入が高い人が長生きをすることは経験的にも統計的にも明らかですが、この要因はあまりはっきりしていません。医療にお金をかけるほど寿命が伸びるかのように思いますが、それを疑う専門家も多いようです。

2017年、アメリカのダートマス医療政策研究所から「収入とガンの過剰診断、過剰診断が問題になるとき」という論文が発表されました。

それによると、乳ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、メラノーマの4種類のガンの発見率は高所得者層が低所得者層の「2倍」であるにもかかわらず、死亡率は両者に差がありませんでした。

発見率が高くなっても死亡率が変わらないのは、早期発見を目指したガン検診が、治療の必要のない患者に対する過剰医療を生み、かえって寿命を縮めるのではという懸念が出ています。寿命を縮めるような無駄な医療、つまり「過剰医療」は大きく三つに分けられます。

まず医療機器の過剰使用です。日本は諸外国と比べて圧倒的にCT保有数が多いことは有名です。日本は100万人当たり107.2台と、他国の4倍近いCTを保有しています。

一般的にCT検査の被ばく線量は胸部X線撮影の線量の600倍と言われ、CT検査によるガンの発生件数は約30,000件、その内の14,500件が死亡すると予想されています(やや極端な数字の気がしますが)。

次が薬の過剰投与です。薬やサプリメントには相互作用があり、飲み合わせによっては思いもよらない有害事象に遭遇します。薬の見直しが正しく行われず、ある薬の副作用に対して別の薬が処方され、さらにその副作用に対処するために次の薬が処方されるという連鎖が起きれば、飲み薬は雪だるま式に増えていきます。

最後が過剰治療となります。健診などで様々な検査をすると、比較的無害な「ガンの疑い」を高い確率で見つけてしまいます。このような形で見つかった場合、そのほとんどが無害と思っても放置するわけにはいかず、結局は手術や抗ガン剤治療を受けることになります。

これが過剰医療ですが、これらによる副作用・合併症で命を落としたり命を縮めることがあるのです。こういった過剰医療の要因としては、医療機関の営利目的や患者さんの思い込み、医師の防衛医療等いろいろ挙げられます。

長生きしたければ病院に行くなという説までありますが、通常は良い医療機関を選ぶという選択肢はあまりないような気がします。私の基本である「普通の食事と睡眠」で健康を守り、病院に行く回数を減らすというのが正しいのかもしれません。

睡眠薬と寝酒

2019-08-22 10:43:20 | 
日本人の成人の約20人に1人、50歳代後に限れば6~7人に1人が、病院などで処方された睡眠薬を服用しています。

睡眠薬は最も使用頻度の高いクスリのひとつですが、使用を怖がる人も多いクスリでもあります。現在日本で処方されている睡眠薬の作用機序は大き三つに分けられます。

一つ目は脳内のGABA-A受容体に作用するタイプで、GABAは神経の働きを抑制する神経伝達物質で、この受容体はGABAが結合して作用を発揮する部位です。

服用した睡眠薬は腸管から吸収され、血液に乗って脳内に到達し、GABA-A受容体に結合することで脳を覚醒させる神経の動きを抑え、眠気をもたらします。このタイプの睡眠薬は、日本国内で処方される睡眠薬の8割以上を占めています。

1967年、今から50年以上前に初めて登場して以降、これまでに10種類以上発売され、処方する医師にとって最もなじみのある睡眠薬です。

GABA-A受容体に作用する睡眠薬の一部は、服用しているうちに効果が弱くなる(耐性)、中止した際に不眠や動悸、発汗などの離脱症状が出現するなどの身体依存(依存症の一種)が生じることがあります。不必要に服用しない、医師の指示なしに急に中断しないなどの注意が必要です。

睡眠薬に抵抗があるため、寝酒に頼る人もいるようです。酒を飲むと眠くなりますが、アルコールもGABA-A受容体に結合します。つまり酒とこの睡眠薬は同じメカニズムで眠気をもたらします。

しかも酒の場合には、耐性で効果が弱くなるにつれ以前よりも量が増えていきやすい、休肝日は離脱症状で眠りにくくなるなどの身体依存が生じます。つまり寝酒は依存リスクのある睡眠薬を服用しているのと同じと言えます。したがって「寝酒」の方が安心というのは全くの誤解としています。

二つ目のタイプは、脳内のメラトニン受容体に作用するタイプです。メラトニンは主に夜に分泌され、今から夜が始まるという体内時計(生体リズム)の情報を身体中に伝えるホルモンです。

このタイプの睡眠薬は、メラトニン受容体に結合することで、体内時計の時刻を合わせるのと同時に眠気をもたらします。2010年に発売され、まだ1種類しかありません。

三つめのタイプは、脳内のオキシレン受容体に作用するタイプです。オキシレンは脳を覚醒させるホルモンで、このタイプの睡眠薬は受容体に結合して蓋をしてしまうことで、脳内のオキシレンが作用しにくくなり眠気が生じます。2014年に世界に先駆けて日本で登場した最も新しい期待の睡眠薬です。

この様にいろいろな睡眠薬はありますが、私は眠るために飲んでいるわけではない「寝酒」の習慣を続けるつもりです。

ガンを栄養不足に食事治療

2019-08-21 10:12:23 | 健康・医療
毎日の食事が、ガン治療の助けになる可能性があるといわれていますが、また新たな証拠を追加する研究結果が発表されました。

食事はすでに、糖尿病や高血圧などの病気を管理する上で極めて重要な要素の一つとされています。

アメリカヂューク大学の研究グループは、赤みの肉や卵などに含まれるアミノ酸の摂取を制限することで、マウスのガン治療効果が著しく向上し、腫瘍の増殖が減速することを明らかにしました。

研究グループは、薬単独では効かないが、その薬剤を食事と組み合わせると効果が出たり、あまり効かなかった放射線治療を食事と組み合わせると効果が出るなどの状況が数多く存在することを今回の研究は示しているとしています。

今回の研究では、アミノ酸の一種のメチオニンの摂取制限に焦点を当てています。メチオニンはガン細胞の増殖を助ける「一炭素代謝」と呼ばれるプロセスで重要な役割を果たしています。この代謝は初めて聞いた言葉で、どういうものかよく分かりませんが、ガン増殖に必須な代謝経路のようです。

老化防止や体重減少とメチオニン制限との関連性はすでに指摘されていますが、メチオニン制限がガン細胞にとって重要な意味を持つことは、ガン治療を向上させる有望な方法のひとつとなる可能性があることを示唆していました。

研究チームは、メチオニン制限が代謝に望ましい効果をもたらすことを確認するために、健康なマウスを用いた実験を最初に実施した後、大腸ガンや軟部組織の肉腫を抱えたマウスを用いた実験に移行しました。

実験の結果、単独では大腸ガンに全く効果がなかった低用量の化学療法が、メチオニン制限と組み合わせると「腫瘍増殖の著しい阻害」につながることが明らかになりました。同様に軟部肉腫のケースで放射線治療をメチオニン制限と組み合わせると、腫瘍の増殖が抑制されました。

これは非常に基本的なレベルで、ガン細胞を特定の栄養素の欠乏状態に陥らせるためと説明しています。

研究チームは今回の研究の拡張として、健康な被験者6人にメチオニン制限食を摂取させる実験を実施しました。その結果ヒトの代謝への作用が、マウスで確認される作用と類似するとみられることを発見しました。

これは食事が人体の特定の腫瘍に対して同様の効果を持つ可能性があることを示唆しています。

今回の研究は臨床試験ではなくあくまで健康な人ですので、本当にガンに効果があるかわかりませんし、メチオニン制限食というのは作るのが難しそうな気もしますが、薬ではなく食事で治療するというのは興味深い感じがします。