ごっとさんのブログ

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自然科学系研究者に「学会離れ」

2019-08-20 10:47:40 | その他
この十数年間で大学などの自然科学系の研究者数は増えたものの、主要学会の会員数は大幅に減少し、中には3割以上減っている学会もあることが、科学技術振興機構などの調査で明らかになりました。

学会離れの背景には、国立大学法人への運営交付金を国が政策的に減らしていることに伴う国立大学の人件費削減や、企業のコスト削減などがあるとみられています。

私も現役のころは出身である農芸化学会をはじめとして薬学会、化学会などの主要学会のほかに、医学系の化学療法学会や趣味のような酵素工学会など最大で7,8の学会に入っていました。

学会に入っている理由としては、大会に参加して情報収集をするというのが大きいのですが、こういった学会で発表するためには、学会員であることが必須であることが多いためです。

私が企業研究者の割には学会発表などを頻繁にやっていたのは、会社として研究成果(あまり企業の役に立たない)を積極的に発表し宣伝するという方針があったためです。歳を取ってからはこういった学会の幹事や委員を頼まれたりしていましたので、退職するまで多くの学会に入っていました。

さて調査は、エネルギー、環境、情報通信、材料、ライフサイエンス、臨床医学の分野で主要45学会に対し、2004年と2018年の個人と法人の会員数を調査しました。

41学会から回答を得て、両時点の会員数が比較可能な学会を分析しました。その結果個人会員は、増加したのが7学会だったのに対し、減少したのは31学会で、日本環境化学会など7学会は30%以上も減少していました。

また法人会員も33学会で減少し、13学会は30%以上の大幅減で、増えたのは人工知能学会と統計学会だけでした。個人会員が増えた7学会中4学会は医学系で、学会への所属や研修の受講が専門医資格の取得条件になっているためと見られます。

総務省の統計によると、2018年の国内の自然科学系研究者数は約79万2000人で、2004年の71万500人から1割増えています。所属する学会数を減らす研究者や企業が増えている傾向がうかがえます。

多くの学会が減少の要因の一つにあげるのが企業の動向です。個人で13%、法人で50%会員が減った電子情報通信学会の場合、04年時の個人会員の6割ほどを企業の研究者が占めていました。

基礎研究に携わる企業の研究者が、製品化に近い開発部門への移動などで減り、個人会員の減少につながっていると分析しています。

たぶんほとんどの企業は、学会費や学会参加費を会社が負担することは少ないので、この会員数の減少は基礎研究部門の研究者が減ってきたか、新たに学会に入る人が減ったためという気がします。

これは学会で情報を得なくても、ネットでかなり詳細な情報まで入るようになったという事も要因としてありそうです。

ゲノム編集でコムギの品種改良

2019-08-19 10:42:40 | グルメ
遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集の技術を使って、雨にぬれても穂に付いた実が発芽しにくく、商品価値が落ちないコムギを開発したと、岡山大学などの研究グループが発表しました。

日本や北欧のように収穫期に雨が多い地域のコムギを雨にも強くできると期待されています。研究グループは、岡山大学資源植物研究所や農業・食品産業技術総合研究機構を中心に、帯広畜産大学や横浜市立大学の研究者も参加しています。

研究グループによると、コムギは6000年以上前に3種類の異なる植物が自然にかけ合わさってできたことが分かっていますが、全遺伝情報であるゲノムを人間のように1組ではなく、3組(Aゲノム、Bゲノム、Dゲノム)持っています。

それぞれのゲノムは7対の染色体からできており、この様に複数のゲノムがあると類似した遺伝子を重複して持つ植物の特性を改良することは非常に難しい事でした。

研究グループは、1つのゲノムしか持たないオオムギで見つかった「Qsd1」と呼ばれる遺伝子に着目しました。Qsd1は「種子休眠」という発芽に適した条件になっても発芽しない現象に関わり、この遺伝子が働かないと種子の休眠が長くなることが分かっていました。

種子の休眠が長いことはムギ類を含めた穀物が、雨によって発芽してしまうことを防ぐための重要な特性となっています。

研究グループはゲノム編集の「クリスパー・キャス9」という技術を使い、コムギが持つ3組のゲノムそれぞれにあるQsd1に相当する遺伝子を一度に改変しました。Qsd1が働かず、発芽しやすい環境に置かれても発芽しにくいコムギを作ることに成功しました。

これに穂の状態で種子に水をかけて濡らす実験を続けましたが、通常のコムギと比べ発芽が目立って遅れたようです。収穫時の降雨によってコムギのような穀物が、穂に種子がついたまま発芽してしまう現象は「穂発芽」と呼ばれます。

穂発芽したコムギから製粉した小麦粉は、品質が劣化して商品価値が著しく下がります。農研機構などによると、穂発芽による経済損失は大きく、日本国内の例として知られる2016年の北海道での被害額は140億円に上りました。

今回の成果について研究グループは、経済的効果や技術開発の面での意義は大きいとしています。このようにゲノム編集技術によって、従来の遺伝子組み換えでは難しかったような改変が容易になり、多くの植物が作り出されています。

こういった新しい植物(食物)が受け入れられるような良い情報を流すことが重要なのかもしれません。

脳の働きを支える「グリア細胞」

2019-08-18 10:25:23 | 自然
脳の神経細胞には毛細血管によって栄養や酸素が運ばれていますが、その量は1日に約2000Lとドラム缶10本分もの血液と、約60Kgもの酸素が届けられています。

この酸素や栄養素をたくさん消費すれば、その分老廃物や活性酸素も大量に出るので、それらを細胞の外に排出していかなくてはなりません。

通常身体の細胞から排出された老廃物を運搬し処理するリンパ系がその役割の中心を担うのですが、脳内ではリンパ系システムが見つかっていませんでした。つまり脳神経細胞から大量に出るごみが、どこで処理されているのか分かっていなかったという事になります。

それが数年前、ロチェスター大学メディカルセンターの研究チームが、グリア細胞が脳内の血管と一緒に働いて、脳内にリンパ系システムを構築していることを明らかにしました。

この働きは「グリンパティックシステム」と命名され、現在様々な研究が行われています。グリア細胞(神経膠細胞)には下記の3種類が存在します。

最も多いのがアストロサイトで、星形の突起を持ち脳内を走る毛細血管から栄養分を吸収しニューロンに供給したり、不要な物質が入り込まないようにして、ニューロン周囲の環境を調整しています。

次がオリゴデンドロサイトで、ニューロンが必要な情報を早く伝えられるように、電気信号を送る神経線維の軸索を覆い、よけいな電気信号を遮断する絶縁性の髄鞘(ミエリン鞘)を作っています。

最後がミクログリアで、これは傷ついたニューロンの修復を行うと考えられています。脳細胞と言えばニューロン(神経細胞)の印象が強くなっています。ニューロンは脳神経細胞の僅か1割にすぎないにもかかわらず、細胞同士が複雑に絡み合い、一大情報ネットワークを形成する脳機能の主役として常に脚光を浴びてきました。

一方脳細胞の9割を占めるグリア細胞は、ニューロンを固定したり、毛細血管から栄養を運んだりするなど、ニューロンの手助けをする補助的な脇役にすぎないと考えられてきました。

しかし近年は、グリア細胞が脳の発達や修復の際に、ニューロンの成長を刺激したり、組織を改変したりする物質を分泌して、神経回路の再配線をすることが視床下部を中心に立証されています。

マサチューセッツ大学のマウスによる実験では、視床下部周辺のグリア細胞のひとつ、アストロサイトを活性化すると過食を促進し、抑制すると食欲が抑えられることが分かりました。

アストロサイトの細胞膜には、神経伝達物質を受け取る受容体が存在し、ニューロンと同じように情報伝達に積極的にかかわっている可能性が示唆されています。

このようにこれまでの脳科学の常識が大きく覆されつつあり、謎の臓器であった脳が徐々に解明されてきているようです。

「熱中症」は室内でも注意

2019-08-17 10:19:24 | 健康・医療
暑い日が続き、各地で熱中症によって亡くなったり病院に運び込まれる患者が増えています。

熱中症で救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が半数近くを占め、発生場所は約40%が住居となっています。もちろん農作業中や屋外で熱中症になる人も多いのですが、高齢者が屋内で熱中症になるケースも無視できません。

消防庁によれば、2018年の夏季に熱中症で救急搬送された人の数は全国で9万2710人で過去4年間で最も多くなりました。

2019年は5月下旬に熱中症患者が急増し、5月20日〜26日の1週間で2128人となっていましたが、その後は平年並みで梅雨明けが遅かったせいもあり、4月29日〜7月28日までで1万8078人となっていてまだそれほど多くはありません。

しかしその後猛暑日が続いており、これから増えるものと思われます。昨年の夏は梅雨明けが早かったせいもあり平均気温が高く、夏季全体を見ると記録的な猛暑でした。救急搬送された人を年齢別でみると、48.1%が65歳以上の高齢者でした。

また熱中症を発症した場所では、敷地内すべての場所を含む住居が40.3%で最も多く、2位の仕事場10.8%を大きく引き離しています。つまり高齢者が自宅で熱中症が多いのですが、これは身体の水分の割合が低い高齢者が多く脱水状態になりやすいことがあるようです。

体温を調節する機能が衰えてきた高齢者は、気温を感知する皮膚や中枢神経がうまく働かなくなっていることも考えられます。さらに加齢によって発汗の機能が低下すると、汗をかきにくくなって気化熱による体温調節が難しくなります。

その上外気温の上昇を感知して皮膚の血管を拡張させる機能が低下し、心拍数も減ってきます。血流量が減少することで、皮膚の血管からの放熱効率も悪くなります。

高齢者の傾向として、あまり水分補給をマメに行わないことが指摘されています。喉が渇いたという感覚が衰えるためと考えられていますが、発汗量が減少しているとはいえ高温下で水分補給がなされないと脱水症状になりやすくなります。

こうした生理学的な理由から高齢者が熱中症にかかりやすいことが分かりますが、さらに冷房をかけ忘れてしまうという事もあるようです。過去の調査によれば、冷房を苦手と感じる高齢者は多く、2011年の東日本大震災と原発事故による節電意識が残っているとの指摘もあります。

また高齢者はエアコンの設定を高めにする傾向があり、暑いから薄着になり衣服内の温度を下げるという事にあまり意識が向かないという研究もあります。

私も高齢者ですが、こういったことを書くと当てはまると感じる部分も多く、熱中症対策をしっかりやりたいと思っています。

本当は怖い「加熱式タバコ」

2019-08-16 10:13:33 | 煙草
アイコスなどの加熱式タバコもさすがに伸びが小さくなり、喫煙者の中での移行も一段落してきたようです。

私もアイコスに代えてから多分2年半ぐらいが経っていると思いますが、色々メリットを感じています。まず第1は咳が出なくなりました。

私は喘息があるといわれており(発作のようなものは全く出ていないので、やや疑っていますが)朝起きたときや寝る前に咳が出るのはそのためと思っていました。ところがこの咳はタバコのタールが原因だったようで、アイコスに代えてから数日で完全に出なくなりました。

紙巻きたばこを吸って出ることを確認してはいませんので、何かの偶然かもしれませんがとにかく楽になりました。

もう一つが受動喫煙の問題です。タバコは健康に害があることを自覚して自分が吸うのは問題がありませんが、吸わない人にも迷惑をかけているという流れは、喫煙可の場所でも何となく吸いにくくなっていました。

その点加熱式タバコは副流煙が全く出ませんし、受動喫煙の可能性は非常に低くなっているはずです。その他もあるのですが、私はアイコスに代えてよかったと思っています。

最近、加熱式タバコは有害物質が少ないという点が強調されていますが、これが健康への害は大きいという論調が増えてきました。

これはWHO(世界保健機構)が、7月の報告書で加熱式タバコや電子タバコを含む新型タバコについて懸念を表明し、これらは新たな技術によるたばこ製品であり、時間が経っていないため健康への影響に関するエビデンスが少ないと述べています。

新型タバコに関する科学的な研究の多くは、当事者であるタバコ産業側から出ていることもあり、利益相反の観点からもそのエビデンスが正しいのかどうか疑問が残るとしています。

さらに新型タバコ製品に対する各国の規制がバラバラになりつつあるが、タバコ製品である以上各国が批准するFCTC(たばこ規制枠組み条約)の規制対象なのは明らかであり、従来の紙巻きタバコ製品と同様に厳しく監視する必要があるとしています。

こういったことを基に加熱式タバコも有害であるという研究も出てきているようです。これは加熱式タバコもニコチンを供給するシステムですので、健康に害があるのは当然と思っています。

ニコチンの生理作用について非常に多くの研究が行われ、ここに例示すると何行にもなりそうなくらい知られています。そのニコチンを紙巻きタバコと同じ程度の量を供給しますので、愛煙家も加熱式で満足できるわけです。

私は禁煙の場所でも加熱式タバコを吸えるようにとは思いませんが、適度な規制でゆっくり吸えるような環境を作って欲しいと思っています。