ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

中心部が暗くなると感じる見逃せない眼の病気

2022-10-11 10:56:35 | 健康・医療
現在はインターネットやテレビなど圧倒的に眼からの情報が多くなっており、健康な目を保つことがの重要性が高まっています。

私はこのところ朝起きるとしばらく目にカスミがかかったような状態で霞んで見えたり、涙がやや出やすいような気がしています。10分ぐらいで治りますのであまり気にしていないのですが、眼も老化しているのかもしれません。

一般に眼の疾患には自覚症状がないまま進行して、気付いた時には失明の危険性があるものがいくつもあるようです。タイトルの中心部が暗くなると感じる人に、圧倒的に多いのが「中心性漿液性脈絡網膜症」という長い名前の病気で、ICSCと略されています。

網膜を外側から包んでいる血管が多い膜を「脈絡膜」といい、網膜は網膜内の血管以外にも脈絡膜の血管からも酸素や栄養を得ています。それと同時に不要になった老廃物を、脈絡膜の血管から排出して機能を健全にキープしています。

網膜は10層もの薄い膜が重なって構成されていますが、網膜の一番外側のバリア機能が低下すると、外側に接する脈絡膜の血管から染み出た水分が、網膜側に漏れ出てきます。この漏れ出した水分が「水ぶくれ」をつくると、部分的な網膜剥離が起きてしまいます。

この病気は網膜の中心部で、モノを見るための視細胞が集まっている「黄斑部」の近くで起こりやすく、ここで網膜剥離が起こると「中心部が暗く見える」という症状が表れます。

この治療としては、水ぶくれができているのが黄斑部から離れていればレーザーで水の出口をふさぐことができます。ただこの病気は3〜6か月もすると自然に治ることがあります。その自然治癒を助けるために脈絡膜の血液循環を促進する内服薬を飲む治療もあるようです。

この病気は水ぶくれの位置によって中心部が青く見えたり黄色く見えたりすることもあり、モノが小さく歪んで見えることもあります。

こういった症状はICSC以外にも、網膜の中心にあり視力のほとんどを担う「黄斑部」に異常が起きる「加齢黄斑変性」という病気の可能性もあります。また糖尿病の人で、黄斑部にむくみが出て「黄斑浮腫」になると「視界の中心部が暗く感じる」という症状が出ます。

糖尿病の患者全員に起こるわけではありませんが、確率としては低いとはいえないようです。このように「中心部が暗く見える」という症状は簡単に治る病気から、治療が難しく予防に努めるしかないような病気まであります。

私はこういった症状はありませんが、前述のようにわずかに眼に異変を感じることがありますので、眼薬などでごまかさずに眼科医を受診する必要がありそうです。

新型コロナ変異の仕組みと今後の進化

2022-10-10 10:30:23 | 健康・医療
新型コロナはほぼ収束の傾向を見せており、冬になるまでは次の波も来ないといわれています。

新型コロナがインフルエンザと同じような単なる風邪となったと明言してはいませんが、感染抑え込みから経済活動優先にシフトしているのは確かなようです。

コロナウイルスは昔から軽い風邪を引き起こすウイルスとして知られていましたが、変異により今回の新型コロナ騒ぎになったものです。ここでコロナウイルスの変異の仕組みについて考えてみます。

21世紀に入ると、従来の風邪コロナウイルスに加え重症型のコロナウイルス感染症の原因となる新型ウイルスが相次いで出現しました。2002年には中国広東省でSARSが重症急性呼吸器症候群として発見されました。

この分類は省略しますが、ヒトからヒトへと容易に伝播し、世界各地に感染が広がりましたが、翌年7月までに封じ込めに成功して終息しました。29か国で8096名が感染しそのうち774名が亡くなっていますが(致死率9.5%)、日本での感染者はありませんでした。

中国に生息するキクガシラコウモリからよく似たウイルスが発見されており、その中のひとつがハクビシンやタヌキなどの動物を介してヒトに伝播したとみられています。

次が2012年9月にアラビア半島を中心に発生した中東呼吸器症候群ウイルス(MERS)です。ヒトコブラクダを自然宿主とするウイルスで、ラクダは感染しても軽症に終わりますがヒトに伝播して重篤な肺炎を起こします。

2022年までに2591名が感染し894名が死亡しており、致死率は35%とかなり高く見えますが、不顕性感染者も多く実際の致死率はもっと低いようです。

そして2019年に出現してパンデミックを起こしている新型コロナウイルスで、MERSよりはSARSに近い性質とされています。

コロナウイルスは自分のゲノムを複製するために、独自の核酸合成酵素(RNAポリメラーゼ)を持っており、ゲノム複製の際にある確率でエラーが発生することで、変異株が生じます。

ただしコロナウイルスが変異する頻度はインフルエンザの10分の1、HIVの20分の1とかなり低いことが分かりました。RNAウイルスが変異しやすいといわれるのは、宿主細胞がゲノムDNAを複製するときに働くエラー修復機構がRNAには作用せず、ミスが蓄積しやすいからです。

ところがコロナウイルスは、RNAポリメラーゼのミスを修正する校正酵素を持っていますが、それでもミスは蓄積します。その他相同組み換えといった現象も知られていますが、ヒト感染では無視できるようです。

今後新型コロナがどのように変異していくかはいろいろな説がありますが、より弱毒化するのは確かなようですので、信じて見守りたいと考えています。

脚の筋肉の減少「サルコペニア」は高齢者だけの問題ではない

2022-10-09 10:28:28 | 健康・医療
最近ロコモという言葉が流行っており、CMなどでも「歩くのが楽になる」や「階段の上り下りが楽になる」というサプリメントが宣伝されています。

私は70歳を超えたころからテニスでちょっと激しく動くと膝が痛くなり、サポーターで対応しています。ただし基本的に歩くのが嫌いで、ちょっと出るときも電動アシスト自転車で移動していますので、筋肉が減少しているかもしれません。

団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年問題がいろいろ取り上げられていますので、中高年をターゲットにしたコマーシャルは増え続けそうです。

最近「ロコモ」「フレイル」「サルコペニア」といった言葉が世の中にあふれていますが、みな脚の衰えからきているようです。ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)は、2007年に日本整形外科学会が提唱したものです。

足腰が衰え、立つ、歩くなど日常に必要な機能が低下した状態を指します。筋力の衰えに加え、骨の強度が下がって骨折しやすくなる「骨粗しょう症」、膝関節の軟骨がすり減って痛みを感じる「変形性膝関節症」、腰が痛む「変形性腰椎症」などが原因のこともあります。

進行すると介護が必要となるリスクが高まり、身体を動かさなくなることなどから慢性疾患の罹患率、さらには死亡率が高くなると考えられています。

フレイルは海外の老年医学の分野で用いられてきた「虚弱」を語源として、2014年に日本老年医学会が提唱しました。1.体重の減少、2.疲れやすい、3.歩く速度が遅くなる、4.握力の低下、5.運動やスポーツをしない、などの活動量が低下することが当てはまるものとしています。

サルコペニアは、筋肉と減少というギリシャ語からの造語で、アメリカで提唱されました。「加齢性筋肉減少症」を意味し、四肢の骨格筋(意識的に収縮・弛緩を行うことができる随意筋)の急激な減少を基準としています。

つまり加齢によって骨格筋量が減少、筋力が低下し歩く能力が低下している状態です。全身の筋肉のうちでは、加齢による筋肉量の減少率は脚が最も大きく、この減少は20歳代から始まっているようです。

一方で姿勢を保つ体幹部の筋肉量が減少し始めるのは45〜50歳とされています。ちなみに歩行に大きく関わる大腿の骨格筋量は、全身の筋肉の30%を占めています。脚の筋力が低下することで日常生活の動作が制限され、転倒や骨折の危険性が高まります。

食べ物を飲み込む力も衰え、誤嚥性肺炎などを起こしやすくなると考えられています。こういったときは必ずウォーキングなど適度な運動を心掛けると続くのですが、私は嫌いなことはやらない主義ですので、せいぜいタンパク質を大目に摂取する程度でサルコペニアを防ごうと思っています。

ノーベル化学賞に「クリックケミストリー」の3氏が決定

2022-10-08 11:08:37 | 化学
今年もノーベル賞の発表の時期になりましたが、残念ながら日本人の受賞は今のところありません。

医学生理学賞に注目していたのですが、今回受賞内容はあまり興味を引くものではありませんでした。化学賞は簡単な化学反応により多彩な機能を持つ分子を作る技術である「クリックケミストリー」を開発、発展させた欧米の3氏が受賞しました。

このうちスクリプス研究所のシャープレス教授は、2001年に野依先生らと受賞していますので、2度目のノーベル化学賞となります。

今回の受賞の対象となったクリックケミストリーという言葉は聞いたことがあるという程度ですが、シャープレス教授が2000年ごろ、簡単な化合物を使って反応が迅速に起こり、不要な副産物をほとんど作らない反応の概念を提唱したものです。

その代表例が「銅触媒によるアジド-アルキン付加環化」と呼ばれる反応です。この反応は創薬や生命科学、材料開発などに広く利用されています。その後生体の正常な働きを乱さないように改良され、進行ガン患者向けの医薬品開発などに利用されています。

シャープレス教授は天然の高分子が単純なパーツをつないだだけの分子で、生命活動を運営できるほど複雑な機能を実現することができることに注目しました。

この自然のシステムに学び、比較的単純な部分構造どうしを高い反応性と選択性を持った炭素‐ヘテロ原子(炭素以外の原子)結合反応によって結びつけることで、新たな機能性分子を創出することを提案しました。

この反応の代表的なものが先に述べた、アルキンとアジド化合物による付加環化反応です。これはフーズケン反応として1960年代に開発されたもので、アルキンとアジド化合物が反応してトリアゾール環を作るものです。

この反応をクリックケミストリーの中心的な反応として位置づけた理由は以下のようなものです。
・アルキンとアジドは多くの有機化合物に導入が可能な官能基であり、基本的に安定である。
・アルキンもアジドもその他の官能基にはほとんど反応せず、お互いとだけ反応する。
・この反応は多くの有機溶媒や水中でも進行する。
・生成したトリアゾールは安定な官能基であり、再び分解することはない。
・収率よく進行し、余分な廃棄物を出さない。

こういった特徴によりこの反応は、クリックケミストリーの理想に最も近い反応とみなされています。近年はこのクリックケミストリーが医薬候補化合物など有用な化合物の探索に用いられています。

また高い官能基許容性を生かして、細胞内などでの分子修飾に応用されています。アジド基を持たせた糖誘導体を細胞内に取り込ませ、ここにアルキンと結合した蛍光色素を結合させることで、細胞内組織の可視化に成功しています。

たぶんこの辺りが評価されてノーベル化学賞受賞となったと思われます。ここでは内容の一部を紹介しましたが、あまり分かりやすい文章にはなりませんでしたが、有機化学者にとっては興味ある業績といえます。

新型コロナ変異株の抗体量を血液一滴で判定

2022-10-07 10:30:08 | 健康・医療
新型コロナの検査法として、PCR検査の拡大をかなり前から指摘されていましたが、結局大規模検査は進展がないままとなっています。

それを補うものとして、抗原検査キットなどが実用化され、個人が簡単に抗原の有無の判定ができるようになっています。

新たな検査として新型コロナの変異株に対する抗体の量を1滴の血液から8分で測定できるシステムを開発したと理化学研究所などの研究グループが発表しました。

新たな変異株が登場してもワクチン接種の効果がその場でわかり、追加の接種を受けるかどうかや接種時期を判断する上でも貴重な情報を提供できるとしています。

この自動測定システムは、特殊加工したチップ(基板)の新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシド・タンパク質を「光固定」と呼ばれる独自の方法でスポット上に配置しました。この上に検体の血液を1滴たらして小さなカセットに装填し、試薬を用いて反応させるというシステムです。

抗体があると化学発光し、その発行シグナルをCCDカメラで撮影することで抗体量を測る仕組みです。これまで抗体量を測る方法としては、主に医療現場などで使われる免疫クロマトグラフィー法と分析センターなどで使われるELISA法がありました。

免疫クロマトグラフィー法は10〜15分程度で結果が分かりますが、感度が低く検体は最大20マイクロリットルが必要で、ELISA法は感度は高いのですが結果が出る間瀬数日かかり、検体も500マイクロリットルを採血する必要がありました。

今回理研などが開発した新たな自動測定システムは、血液1滴(5マイクロリットル程度)があれば、カセットを装置にセットしスイッチを押すだけで自動的に進み、わずか8分で結果を出すことができます。

検査するその場で結果が出て被験者の負担が小さくなります。また従来の方法では一度に複数の変異株に対する抗体量を測定できませんでしたが、多く登場している変異株に対する抗体量が1回の検査でわかるようです。

研究グループのこのシステムを使って、さまざまな年齢の男女15人を対象にワクチン接種前後の変異株に対する抗体量を調べました。その結果2回目接種から6か月以上経過するといずれの変異株に対する抗体量は顕著に減少していました。

しかし3回目接種をすると、接種1か月後にはウイルスと戦う力が十分期待できる抗体量を確認できたとしています。今回開発された測定法は確かに簡便でよい方法と思いますが、実際問題として抗体量を測定する必要がどこにあるのかはよく分かりません。

医療現場などで治療の一環として抗体量を知る必要が出てくるのかもしれませんが、必須の検査とは言えないような気がします。新しいタンパク質の定量法としては、なかなか面白いといえるシステムかもしれません。