
私と小鳥と鈴と
私が両手をひろげても お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに 地面(じべた)を速くは走れない。
私がからだをゆすっても きれいな音は出ないけど
あの鳴る鈴は私のやうに たくさんな唄は知らないよ。
鈴と小鳥とそれから私、みんなちがって みんないい。
つもった雪
上の雪 さむかろな つめたい月が さしていて、
下の雪 重たかろな 何百人も のせていて、
中の雪 さみしかろな 空も地面(じべた)も みえないで。





































山口県に生まれた金子みすず。大正末期から昭和初期にかけ雑誌『赤い鳥』
『金の星』『童話』などに投稿し、西条八十から天才詩人と賞賛されるも、1930年
3月10日、自ら26年の短い生涯を閉じた。上記の二編の詩は、瑞々しい才能に
恵まれながらも充分に開花させること叶わず、この世を去ったみすずの感性が
光る代表作である。