
僕の人生の僥倖のひとつは、
多感なころ、16歳のとき、
佐野元春のアルバム『SOMEDAY』に
リアルタイムで出逢えたことである。
若くて粗野でロック音楽の知識もろくになかったけれど、
魂を鷲づかみにされたような感覚は、
いまでも鮮明に覚えている。
今般、M-ON!で「名盤ライブ」という企画がスタート。
往年の名盤をアルバムの曲順どおり、当時のアレンジで全曲再現する。
その第1弾に『SOMEDAY』が選ばれた。
東京と大阪でそれぞれ2公演ずつおこなわれたのだけど、
残念ながら僕は参加できなかった。
名盤ライブの参加者には、引き出物的なグッズが配られたらしい。
アルバム制作のエピソードについて、
当時の関係者の証言や未公開資料どをまとめたDVD映像とブックレット。
まさにファン垂涎もののアイテムだ。
正直、気にかけてもなかったのだけど、
ある日突然、僕の肩に天使が舞い降りた。
この名盤ライブに複数回参加したファン友だち(ジャスミンガール)が、
僕にその引き出物?をプレゼントしてくれたのだ。
エンジェルからの贈りものは素晴らしく、
とくに吉野金次さんと佐野さんの対談には、
ガラにもなく何度もウルッときた。
人間の情熱の量などたかが知れたものだが、
ときに巨大な量を持って生まれざるをえなかった人がいる。
佐野元春が、その一人である。
佐野さんにおける生命の炎というべきものは、
もし彼がアーティストじゃなかったならば、不必要に多量すぎる。
佐野さんは幸いミュージシャンであったために、
その火に灼かれることなく生きつづけることができた。
アルバム『SOMEDAY』の制作はその火を包みこんで発光させた作業であり、
若い佐野元春の白炎のようなその気体が、
オブラートに包みきれることなしに、生の炎として噴きだしている。
映像を見ている間中、当時のメンタリティが瑞々しく甦り、
僕は何度もうなずいた。
僕は、佐野元春というミュージシャンを同時代に得たことに、
誰彼なしに感謝をしたい。