「仙厓 世界を甘受する芸術」(Sengaï. L’art de s’accommoder du monde)の初出は、フランスで一九九四年に出版された仙厓についての論集 Sengaï moine zen 1750-1837. Traces d’encre, Paris-Mussées の序論としてである。
仙厓の書画そのもののについての観賞とそこから発展させられた日本の「不完全な芸術」についての考察を内容とする十頁余りのエッセイである。禅と書画との関係についての考察には、これといって特にオリジナルな洞察が示されているわけではない。訳者がその訳注で正当にかつ厳しく指摘しているように、日本人の慣行や日本語の特性について、断片的な日本についての旧い知識や日本での限られた見聞から過度に一般化していることに由来する初歩的誤認も見られる。ただ最後から二番目の段落で、突如、西洋で仙厓の作品に比肩しうる例として、モンテーニュの『随想録』が挙げられているのが目を引く。両者の教えは、共に賢者の生き方を示唆し、私たちにその探求を促すという。
この二つの教えの類似から、旧大陸の両極端で異なる時代に生まれた教えが、普遍的性格をもっていることがわかる。二つの教えはともに、見せかけを拒むこと。あらゆる信仰を疑うこと、最終的真実への到達をあきらめることを勧める。そして同胞に交じって穏やかに生き、小さな歓びを分かち合い、悲しみに共感し、世界に順応するために、賢者に最もふさわしい状態を探し求めよと励ますのだ(101-102頁)。
Cette rencontre atteste la portée universelle d’enseignements nés à des époques différentes, aux deux extrémités de l’Ancien Continent. Ils incitent pareillement à rechercher dans le rejet des apparences, le scepticisme envers toutes les croyances, la renonciation à atteindre une vérité dernière, l’état qui convient le mieux au sage pour vivre sereinement parmi ses semblables, partager leurs petites joies, compatir à leurs tristesses, et pour s’accommoder du monde (p. 126).