内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

舞い込む依頼は拒まず ― オペラ「金閣寺」・ライン国立歌劇場・『宗教とは何か』

2017-07-07 18:53:28 | 雑感

 自分から進んで研究発表の機会を求めることはほとんどない。それでもぼちぼちと発表する機会がある。それは機会の方から舞い込んでくるからである。講演を頼まれることは稀にしかない。依頼があれば、何か外せない他の用と重なっていないかぎり、引き受ける。
 昨年十二月、大学のキャンパスのすぐ隣りにあるドミニコ会修道院で修道士たちを前に講演をした。そこの修道士の一人が日本人で、彼がストラスブール大学神学部に提出した博士論文の審査に加わったのが縁で、その彼から頼まれたからである。
 西洋キリスト教世界でカトリック信仰の中枢を担う彼らを前にしての講演という滅多にない機会だからと、キリスト者たちが謳う宗教的寛容の欺瞞性と古代多神教から学ぶべきものという、かなり挑発的な話をした。こちらの狙いは的中し、発表後の質疑応答はとても活発で、私も随分刺激を受けたが、彼らにとっても面白かったようである。また話に来てくれと言われている。
 先日、その講演を聴いてくれた修道士の一人で修道院付属のエマニュエル・ムーニエ・センターを取り仕切っている方から、講演の依頼が来た。西谷啓治『宗教とは何か』について発表してくれと言う。
 来年三月に、ストラスブールのライン国立歌劇場で三島由紀夫『金閣寺』に基づいた黛敏郎作曲オペラ「金閣寺」が上演される。歌劇場主催の « Festival Arsmondo Japon » の目玉企画である。それに合わせて、国際演劇・視覚芸術学会シンポジウム「身体とメッセージ/ 翻訳と翻案の構造」も開催されるのだが、そのシンポジウムで私がするつもりの発表についてはすでに先日の拙ブロクの記事で述べた。
 詳しい事情はわからないのだが、ストラスブールのドミニコ修道会とライン国立歌劇場とは長年協力関係にあるとのこと。「金閣寺」上演を中心としたフェスティヴァルの期間中に日本の宗教に関する講演を企画の一つとして折り込みたいという依頼が劇場側から修道会へ来たらしい。それで日本人修道士と私に白羽の矢が立てられたということのようである。
 三島の『金閣寺』と西谷の『宗教とは何か』との間に何か関係があるとは思えないが、『宗教とは何か』については数年前にその「空」の思想について発表したことがあるので、これを機会に同書を読み直し、西谷の「空」の思想についての自分の理解を深めるきっかけにはなろうかと講演依頼を引き受けた。