内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

夏空の下で読むシモンドン ― 夏休み日記(2)

2017-07-18 18:06:46 | 哲学

 今日は夏休みに相応しい良い天気でした。日中の最高気温は30度を超えました。
 朝はいつものように近所の市営プールで七時から小一時間泳ぎ、その後は日がな一日、Gilbert Simondon, Du mode d’exitences des objets techniques, Aubier の1989年版を読んでおりました。もっとも、その合間に大学関係の仕事のメールを処理したりしていたので、ずっと読書に集中できたわけなはないのですが、それでも今日はかなりの「収穫」がありました。
 手元には、同書の1989年版と同一の版組の2001年発行版と2012年刊行の改訂新版とがあります。両者の間には、活字・版組・頁付に違いがあるだけでなく、後者には、シモンドンが初版に書き込んだ注解や付加などが取り込まれており、特に重要と新版編者であるシモンドンの奥さんによって判断された付加は脚注に示されているという重要な違いがあります。さらに、前者には、カナダの西オンタリオ大学の John Hart による序文が巻頭に置かれているのに対して、後者では、この序文が削除され、その代わりに、シモンドン自身が本書の初版(1958年)刊行時に書いた短い内容紹介が巻末に置かれています。
 シモンドン研究で本書を引用する場合、現在はこの2012年版に依拠すべきなのですが、この新版刊行以前のシモンドン研究は当然旧版に拠って引用しており、しかも両版にはかなり頁数に違いがあるので、両版を持っていたほうが参照の際には便利なのです。幸いなことに、旧版を十数年前に買ってあり、ずっと東京の元実家に置きっ放しにしてあったのですが、昨年末から今年のはじめに帰国した際にこちらに持って来ました。
 現代哲学において人間的現実を総合的に考えるとき技術的対象の価値の認識がきわめて重要な問題になるというシモンドンの哲学的立場がよく表れている一文を « Introduction » から引用して、今日の記事の〆といたします。

La prise de conscience des modes d’existence des objets techniques doit être effectuée par la pensée philosophique, qui se trouve avoir à remplir dans cette œuvre un devoir analogue à celui qu’elle a joué pour l’abolition de l’esclavage et l’affirmation de la valeur de la personne humaine.

Op. cit., p. 9.