自分が出会ったキング・クリムソンが、このアルバムということもあるが、記憶に残るアルバムで、むしろ年とともに、逆に鮮度を増している。
このアルバムは、当時、古くからのキング・クリムソンのファンには「これはクリムソンではない」と言われていたものだが、今はそういったことは聞かなくなった。
「ディシプリン」とは、規律とか鍛錬といった意味。
渋谷陽一に言わせると、白人音楽が黒人音楽を越えるための、ロバート・フリップなりの回答が「ディシプリン」、つまり、鍛錬を積むことであるという。
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1981年当時、音楽界ではニューウェイヴが過去のロックを解体し、他の音楽との融合を目指していた。
リズムをテーマとしたものは多く、トーキングヘッズの「リメイン・イン・ライト」、PILの「フラワーズ・オブ・ロマンス」、ゴドレイ&クレームの「イズミズム」、YMOの「テクノデリック」などなど・・。
フリップは、このアルバムの前に、リーグ・オブ・ジェントルマンというバンドを作ったが、そのアルバムは、まさに、リズムとの格闘であって、楽しんで聴けるものではなかったが、フリップが目指そうとした何がしかの音楽の視点が提示されていた。
それが、開花したのが、この「ディシプリン」だったと思う。
多様な批判はあれども、この音楽は、未だに唯一無二なものである。
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PS:エイドリアン・ブリューは、当時、トーキングヘッズに、そしてこのキング・クリムソン、そして坂本龍一の「左うでの夢」(これも脱西洋音楽を目指した、リズムをテーマにしたアルバムだった)、果ては、スネークマン・ショーとのジョイントと、すさまじい活動を行っていた。
彼のギター・スタイルが革新的であった点も、この「ディシプリン」を輝かせた大きな理由であろう。