夜の空にむかって拳銃を六発射った。発射の瞬間、そのフラッシュのなかで無数の雨のしずくが見えた。まるで拳銃の音におどろいて、雨そのものが動きを止めたような、広大な琥珀色の壁。数億の雨のしずく、数億の涙、数億のアクセサリー、白いベルベットの板の上に並べられた数億の宝石。フラッシュが消えると、写真を撮られるあいだ停止していた雨のしずくたちは、冷たさと痛さの昆虫たちのように、いっそう烈しく三人の男の上に降りかかってきた。(小笠原豊樹訳)
レイ・ブラッドベリの長雨という小説ですね。
このように延々数ページに渡って長い雨の描写が続きます。
そして、長い。長い雨の後に,
数行の太陽の、光の暖かさに出会える話です。
そんな出会いを感じるのが、この光舜松脂「光輪」です。
試してもらった方達の弾いた瞬間の笑顔、驚きの顔が、この小説を思い出させます。
皆さんも経験あるでしょう。ある朝、森の中に散歩に出かけます。
道ともいえぬ芝草の上を歩いていくとぽつぽつと花の生えた森のなかへ迷い込みます。朝霞のまだ漂う中に森の奥の木下闇が、その下生えを源も分からない光に照り映え、森全体が淡く光って来る、そんな印象の光舜松脂「寂光」です。
これは私の経験ですが、もう50数年前、北海道の北見の山の中に立派な胡桃があると聞き見に行きました。
元々、ある木場の親父に勧められて、家具は胡桃、芯があるのに人肌に優しくどんな形にでも馴染んでくれる。
そんなことから、胡桃の木で家具を作り始めていたのです。
伐採時期の11月の終わり、案内の木こりさんと二人で、時々膝下くらいになる雪道を一日近く山に入りました。
沢沿いの道をの上っていくと、周りは胡桃の木の森、その中でもひと際高い胡桃は20mくらいもあるでしょう、たぶん3,400年。
流石にその木の威容に「これは切ってはいけないよね」と、その日は近くの山小屋にとまることに。
道を下っていくと、雪をかぶった森の上に空を埋め尽くすほどの耀く星々、これが光舜松脂「煌」の印象です。
何とかこの夏の終わるごろにはと、でも、暑いですね。
皆さんも気を付けてお過ごしください。
松脂工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ
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