これは馬毛の太さの比較です
以下の話は、馬毛を扱う業者さんから聞いた話です。
馬毛は基本的には、死亡した馬からとられます。
毛だけをとるわけではなく、皮や肉などの方が主な取引になるようです。むしろ馬毛は副産物程度の扱いだそうです。
馬毛は、最初とても脂分を含んでいます。かなりべたべたしていまして扱いがとても大変だとのことです。
擦弦楽器の弓に使う毛は、尻尾の中の一番長い部分を使いますから、馬毛の全部の10%にも満たないでしょう、(馬毛の中にはタテガミなども含まれますから)
残りの90%はブラシや筆あるいは刷毛、などに使われます。稀に織物などにも使われます。
馬毛をまずは色分けします。比較的白っぽいものは擦弦楽器の弓になるとのことです。
それから、お湯で煮て油分を取り除きます、(この時の温度管理も難しいようです)
それから、長さを分けて、長いものは擦弦楽器の弓毛にとります。
この後、塩素で脱色します。
この段階で、基本的には現地の業者さんが脱色の度合いを決めていくようですが、世界各地の馬毛の業者さんと、生産者が話し合い、どのくらいの脱色にしたいかを決めるところもあるそうです。
無脱色の馬毛は、そのまま弓に作りますととても松脂が乗りにくいです。
それこそ皆さんはご存知だと思いますが、10年以前前の二胡の弓に松脂を最初に塗るのはとても長い時間がかかったと思うのです。
これは、脱色がそれほど強くされておらず、油分が馬がに残っていたからでしょう。
でもこういう弓はとても長く使えましたし、音も強く出ました。
脱色が強いと油分もたくさんとれ、毛自体に粘りもなくなり、切れやすくなります。
しかし最近の、弓は比較的きれいに白く、松脂もそれほど頑張って塗らなくても着くようになって来ています。
ヴァイオリンの弓は、比較的脱色が少ないのです。
それはバイオリンの奏法の中に、かなり弓を弾ませる奏法があるからでしょうか。
脱色が強すぎると、毛が傷んで弾力も減り弾み方が弱くなります。
ここまでは、そのほとんどの工程が、手作業です。
馬毛の平均的な重さは、長さが90センチとして、平均0,05グラムくらいです。
ですから、2本で0.1グラムくらい、ヴァイオリンなどに使うのは、6から7グラムくらいです、
二胡の場合は8から9グラム、大体160本から180本くらいと考えてもよいでしょうが、
購入した馬毛の1キロの束の中で比べてみると、細いものは、0,03くらい3のもありますし、太いものは、0,08くらいの物もあります。
細いものはなるべく省くと、最初1キロだったものが、0,8キロくらいになります。
この画像の一番下の物は、よじれていてどうしても真っ直ぐにはなりません。
中には枝毛などもあったりして人間の髪の毛と似たところもあります。
これらの物を省いていくと、かなり減ってしまいます。
このように馬毛は天然の物ですので、必ずしも一定の太さでもないですし性質でもありません。
仕入れる度に少しずつ違いがあるのも当然なのですが、
それらを、弓を作る人が、選別して、手をかけてなるべく真っ直ぐにして、弓として作り上げるのです。
但し皆さんが、ご自身の髪の毛にドライヤーやヘアアイロンなど使うということはほとんどないはずです。
ですからヴァイオリンの弓を作る人たちは、ひたすら手作業で弓毛を整えていきます。
良いブラシが必要で、そのブラシが馬毛だというのは面白いですね。化学製品のブラシを使うと静電気を帯びて、毛がぼワッと膨らんでしまいます。
また馬毛は、使っているうちに伸びてきます。ですので、二胡の最近の弓は、後ろにネジが付いていて、それで毛の張り具合を調節できるようになっています。
買ったときにきれいにまっすぐ整えられていたとしても、馬毛一本づつ太さも違い伸び率の違いますから、
中にはダラーと伸びてきたりするものも、多く混ざっています、それらを防ぐためにも、本当はなるべく同じような太さの物を選別して、そろえるのが良いとされています。
二胡の弓の場合は、弓自体が消耗品という考えもありますので、ヴァイオリンの毛などと扱いが違うなと感じることもあります。