二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

二胡と刀、終わり。

2012-06-05 10:21:32 | ■工房便り 総合 
二胡と刀の共通な部分というのがもう一つあります。

二胡だけには限りませんバイオリンもです。

要するに、偽物が多いということです。

もちろん、名前の入っている物も沢山あります。

バイオリンなども、製作者の名前は、F字孔から覗くと、裏板に製作者のサインの入った紙が貼ってあります。

しかしこれが当てにならないというのは相当昔から言われています。

ストラデバリウスやガルネリ、アマティーなどのオールドバイオリンは、100年ぐらい前から徐々に価格が上がってきています。

今のように億単位にまでなってしまったのは、日本のバブルのせいであるとも言われています。
そうなるともう贋作の山です。

まずは疑ってかかるのが常識なのです。

二胡も言うまでも有りません。

もう製作はしないと言われている人の楽器が販売されていたりもします。

どちらがホントの事なのか分かりません。

楽器は弾いてみなければその価値は分かりませんが、弾いてみても解らないということも有ります。

明らかに、これは安物という以外のものは、それぞれに作者が力を入れて作りますから、みなそこそこは鳴るのです。

良く正月に、高額のバイオリンと量産品のバイオリンの聞き比べなどやりますが、当たる人が非常に少ないですね。

もちろん、私達視聴者は、テレビのスピカーを通してですから、それほど良く音が再現されているわけでもないとは言っても、量産品と、ストラデバリウスの差等聞き分けられるものでもなかなか無いと思うのです。(聞き分けられる人ももちろんいます。悪しからず)

二胡に至っては更にと思うのです。

確かに誰々作と、胴に彫ってある物も有ります。

刀も同じですね。

目釘を抜いて、ナカゴ、(柄の処の内部の鉄)を見てみると、たがねで作者の銘が刻んであります。

しかし、虎徹(江戸時代の初期の鍛冶屋、新撰組の近藤勇が愛用したと言われています)にしろ、かの有名な初代の正宗にしろ、意外と銘の入っていない物が多いのです。

むしろ、銘の無い物の方が多く有ります。

作者がこれぞと思う物きり、銘を刻まなかったのかもしれません。

ではどうして、正宗なり虎徹と分かるのかと言いますと、その人独自の技術というのがあり、鉄の肌や、波紋等にそれが現れます。

もちろん真似は出来ますが、全く同じようにするためには、材料から変えなければいけないということも有りまして、なかなかに難しく、刀の偽物というのはまだ分かりやすいのです。

明治以来、材料まで真似して作ると言う贋作の制作者も少なくなりました。

古い地金が入らなくなったということも影響しています。

二胡は、無理ですね。

これは誰々の作と言われて、証明書がついていたりするともう全く分かりません。

明清材の二胡というのも出ています。

200年も400年も前の家具なり建築なりから取りだした材料を使っている物です。

これも見ただけでは分かりません。

かろうじて、30年以上は経っているかな?というのは材によっては分かります。

しかしそれ以上100年なのか200年なのかは、科学的検査でもしない限り分からないのです。

刀は美しくて切れればよく、二胡は良く鳴れば良いのですが、

刀は切ってみなければその切れ味というのは分かりません。

折角研ぎあげた刀でやたらに何か切るわけにもいきませんからね。

そして二胡は、シッカリ弾きこまなければ、そのホントの音というのは現れてきません。

ましてや、二胡の場合弾き手が相当シッカリ鳴らせないと、健全に育つとも言えないのです。

かなり癖っぽい、調整と弾きこみをすると二胡はそのように育ってしまいます。

刀も研ぎ方次第では相当な名刀でも、その姿の美しさは現れてこないことも有ります。

偽物というのは、どの世界にも有るものですが、特に楽器は多いようです。

ですから、二胡はまずご自身で弾いて納得できる事が、まず第一の条件です。

それから弾きこみです。

そして、調整です。

シッカリと鳴らす事を考えた調整が大切です。

音色は調整で作ると言うより、皆さんの右手から出るものですし、皆さんの感性や、感覚、考え方から生まれるものです。

刀はそれほどの名刀ではなくとも、無銘であろうとも、シッカリと研ぎあげれば、美しく輝きますし、二胡はシッカリと弾いてやりさえすれば、良い音色を奏でます。

二胡にしろ、刀にしろ、作る者は自然を相手に、様々試行を重ね、世の中に出す以上はこれと思うもの以外は出しはしません。(本来は)

後は皆さんが、ご自分の腕を磨いて、良い音色を作るだけなのです。

この項終わり。


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