10年ほど前、まだ神田の光舜堂を始めたころ、里地帰君に出会いあました。
里地帰君はこれだけ豊かな木材のある日本ですし、またどうやら二胡そのものが日本に定着するのではないか、それなら日本の木で、何か良い楽器が出来ないかと、話が合いまして。
胡桃の木、栗、さくら、樺 そして板谷楓などで試してました。
どうも今一つで、納得できなかったのです。
そんなところへ、里地帰君から、杉で二胡を作って欲しい、「頼朝杉」という名前の付けられた1000年近く前の木が風倒木になって、それで記念の物を作って欲しいとのことでした。
古い緻密な木目の杉で例の屋久杉に近い風合いを持つ木でした。
この「頼朝杉」で作った二胡はウッドワークスという展覧会で賞もいただきましたが、私としては音としては二胡独特の音になり切れない、何か他にもと、この杉の木で作る事をきっかけに日本の材料で作り始めたのです。
もうすでに楽器の材料として使われている木は試してみるべきと、お琴を作る桐の木。枇杷を作る桑の木、そして和太鼓を作る欅。
桑はとても良い音色になるのですが、日本の桑は良いものはほとんどなくなって、(和家具の材として大変貴重なもの)欅なら沢山現在でも見られますし、ほとんど日本固有の材という事でも日本の木の代表になるのではと、作ってみたのが、最初の和胡です。
当然蛇皮等ではなく和紙を使ったCDMに。
そして材は選びに選んで、千葉の養老渓谷の欅、これは古くから和船の舵を作るとても硬い材料として知られていました。
二胡の材料は硬いほど良い響きを作り出します。
里地帰君はこの楽器こそ日本に定着した楽器として「和胡」という名前を付けました。
10年経ち今では低音の和胡も出来上がり大変人気の高い楽器となりました。
今回福岡の調整会の間に行われた和胡の演奏合奏はとても見事なものでした。
何がと言って、まさに合奏、の良さを響かせていたのです。
今まで何度か書いてきましたが、二胡だけの合奏はモワッとして綺麗なハーモニーを響かせられません。
特に低音の二胡はぼんやりとした音にしかならないのは皆さんのご存知だと思います。
折角の合奏を聞きに行きながら、みなさんも確かに二胡の音なんだが、思っていたオーケストラのような響きとハーモニーが聞こえてこないことに、???と思ったかたも多いと思います。
音が前に出てこないのです。
福岡の和胡隊の合奏、これは見事でした
一つには、和紙の人工皮のクリアーな振動、そして何より使われている木が統一されていることでしょう。(もちろん弾いていた方の演奏力)
ですからそれ程多くは無い低音部がしっかり支えて、全体のハーモニーが響き合うのが聞こえてくるのです。
こんなことは初めてでした!
以前から言っていますように、合奏するなら二胡はせめて樹種の統一をはかるべきでしょう。
そうでないと折角のアンサンブルの各楽器がそして各パートが響きあう良さというのが無くなります。
特に低音二胡、ただボーボーいうモワっとした音に鳴りかねません。
嬉しかったのは、小学生の3人のお嬢様たちが和胡を気に入って、何時かはプロになりたい!!!
こんなお手紙もいただきましたし。
更には和胡を弾いている方達皆さんからお手紙をいただいたのです。
たまたま、九州へ行ったのが私の誕生日、本当にありがたいことですがこんなに多く人から祝われたのは、初めてでした。
楽器を作る人が弾く人と直接つながるという幸せな日でした。
また、岡山、直島、高松、福岡、長崎、神戸と古くからの知人、兄、弟、娘の様な木村ハルヨさんとまた古い西野二胡にも出会え、和胡を弾く人達とも、出会えたのは、この6日間はかけがえのない時間を持てたようです。
そして何より、ネオちゃんがきちんと二胡を弾く人和胡を弾く人達と交流が出来たのは、先々のためにとても良い事ではないかと思います。
福岡では里地帰君そして彼を支える方達そして松尾あかねさんと生徒の方達大変すばらしい演奏と交流時間が持てたのも大変ありがたいことです。
また福岡で二胡楽器店をやっている高崎さんと少しは深い二胡の話が出来たのも有意義でした。
高崎さんにも、松尾さんにも、里地帰君にも「ワックイ」はお渡しして付け方のコツなども伝えてあります。生徒さんあるいはお近くの方は、この木軸で困っていたら連絡してみてください。
色々あった一週間でした。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ