二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

日本の二胡を作ろうと思います。

2012-11-03 12:00:54 | ■工房便り 総合 
どんな手わざの仕事でもそうですが一人前になるには10年も20年もかかると言われます。

2,3年木工をやってできるなどというのは限られたことです。

私の場合、木工だけは60年近くもやっていますが、皮張りは未だ5年です。

(蛇皮ではなくとも皮そのものは仕事でいろいろ扱ってきたのが幸いだったかもしれません)

中国の場合、二胡の蛇皮を張る人が二胡師と言われるようです。

もちろん木工そのものをやらないまでも、胴の構造などにはそのアイデアが活かされます。

蛇皮の性質を知るだけでも多分数年かかるのだと思います。

そんな世界に、二胡作りとしてはド素人の私が足を踏み入れたのです。

中国に行って伝統的な二胡の作りを覚えた方が早いのかとも思いましたが、とりあえず先ずはやってみるところから始めました。

幸いに、良く乾いた紫檀黒檀というのは、私の手持ちでもそこそこありましたし、たまたま蛇皮をも手に入れることが出来ました。

これなら何とかなると、作ってみた物が、幸いにと言うべきか、不幸なことにと言うべきか試しびきをしてくれた二胡屋さんに、いきなり買い取ってもらえたのです。

実は何が良くて何が悪いかも解りませんでした。

ただ今までの中国製の二胡を分解して、見よう見まねで同じように作っただけなのです。

買い取っていただいた楽器屋さんにその時に言われました。

「西野さんこれはとっても良い音です。良く出来ていますが、これは中国人の作った物と変わりません。このままやって行っても、何十年も二胡だけ作ってきた名人にはかないませんよ。
これだけ西野さんは作る力はあるのだから、自分なりにデザインも音色も工夫しなければ折角の日本で始めた二胡作りが意味はないですよ。日本人は楽器作りに向いています、もっと良い物を目指して下さい」と。

中国屋楽器店のオーナーショウホウさんに言われたのです。(感謝です)


確かにその通りです。

私自身が今までの二胡の音色に満足していたわけでもありませんし、勿論デザインとしてはそれが仕事ですから、更に綺麗な物作りたいというのは本音でした。

せめてデザインは、と思いながらもそのデザインそのものが、音に大きく影響するというのに気が付くのにそれほど時間はかかりませんでした。

頭の大きさ一つ、木軸の太さ一つ、胴の木の厚み一つどれをとっても音に影響するのが楽器なのです。

人はいろいろ言います、あれは中国の二胡(アルフー)の音では無い。

あんなデザインは良くない。

今でも色々言う方はいらっしゃるとは思います。

しかしあんな鳴らない楽器は無い、とはどなたも言いません。

音色が悪いという方もいらっしゃいません。

むしろここまで鳴らなくとも良いのではないかとは言われます。

ただ、最近作っているシャム柿、コウキ紫檀、インド紫檀の二胡に関しては、どなたもどんな批判もしません。

敢えて言うなれば、高い!

これもどうなのでしょう?

私の作った楽器より鳴らない二胡が、もっと高額で売られていませんか?

値段は安くとも、雑音だらけで壊れやすく、全部の音は鳴らないという楽器はどうなのでしょう?

或いは、相当高額私の作った物より高額な物の中にも、、、

最近はご自分の楽器とドデカゴンを比べようとする方はいません。

以前はご自分のお持ちの二胡と比べても良いですかという方はかなりいらっしゃいました。

でも是非比べてみて下さい。良いの悪いのということでは無く、弾き比べてみて下さい。

感情的な悪口でなく批判はちゃんとお聞きします。(自分の為ですから)


そんなことも有った中で、私自身は他の二胡と比べる気にもなりません。

何故なら二胡そのものが好きですから。

中国で作られ雑音だらけにしても、あちこち壊れていてもやっぱり誰かが作った二胡でありどなたかがいつくしんで弾いて来た二胡なのですから。

折角何故この雑音が出るか或いはどこを削ればどこを補強してやれば、もっと健全に鳴るということが分かってきたのですから、

これを活かさないのは、楽器作りとしては中途半端な気がします。

木でできている楽器にメンテナンスは付き物です。

もし私が好きで作っているだけなら、二胡作りですと自分の趣味ですとうそぶいていることもできます。

或いは自分のブログに好き勝手な想いだけを書くマニアックな二胡弾き、二胡作りでも良いのです。

わたしの使命は二胡そのものを活かすことだと感じています。

それには修理もメンテナンスも仕事としてやるべきなのだと、考えているのです。

あのストラデバリにしろ、アマティーにしろガルネリにしろ、調整や修理(人の作ったものでも)までやっています。

それが仕事だからです。

楽器は作るだけではありません、演奏者が気分良く弾けるように調整修理をしていく所までやって初めて仕事と言えます。健全に鳴る楽器を維持していくのも楽器屋の仕事なのです。

楽器は出来上がってそのままではありません。

弾きこみによっても、経年変化によっても変化していきます。

また楽器の構造自体も変化していくのです。

中国で作られた二胡は当然中国人の好みで作られます、あの喉頭音の多い言語に見合う音色だと思うのは私だけでは無いと思います。

元々が歌などの伴奏に使われていたのですから、当然そうなります。

でも、日本に入って来てからもそうなのでしょうか、勿論中国音楽大好きという方も沢山いらっしゃるとは思います。

嘗ての中国文化文化に思いをはせ、その一環としての二胡を好きな方もいらっしゃるでしょう。
でもどうなのでしょう、私の年ではもうすでに音楽教育というのが、ヨーロッパの平均律での教育になっていましたし、先生方もピアノやオルガン等で音楽を教えていました。

また子供の頃にはもうすでにアメリカのロックやジャズが日常的に流れていたのです。

ですから、今の二胡に対しては、異国情緒の音色という部分も有りましたし、またその揺れる音色という部分に激しく感動もしました。

それらは、その他の弦楽器、インドのシタールや、アラブのウード等皆さんもどこかで聞いてはいても、その音を身近に、ましてや習いたいなどという人はごくごく限られた人きり居なかったと思います。

二胡は違いますね、いくら女子十二楽房が流行ったとは言え、五万人以上の人が習おうとはどなたも想像できなかったと思います。

そこには、二胡の音色が日本人の気持ちをとらえる何かがあったのだと思うのです。

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