「成長の中心になるアフリカに投資すべきは今だ」という安倍首相の言葉に象徴されるように、アフリカが資本主義最後の秘境として垂涎の的となっている。
アフリカ大陸は域内人口10億を超える潜在的大市場であるから、資本主義にとって最後のフロンティアとして照準に入ってくるのは自然な流れである。資本主義は世界を一巡して人類発祥の地へ戻るわけだ。
アフリカ再分割競争の始まりである。しかし19世紀のようにアフリカは無力でない。独立運動が一巡し、大陸を束ねるアフリカ連合(AU)も発足している。今や、アフリカの支配層自身が積極的に資本主義を導入しようとしている。
そこでは豊富な天然資源を土台とする資源資本主義による発展モデルが目指されているようである。21世紀のアフリカ再分割競争で19世紀には分割される側にあった中国が一歩先行することの意味はそこにある。アフリカでは旧社会主義の強権支配国家がいまだに少なくない中、中国式の政治的に統制された資本主義という「社会主義市場経済」が魅力的に映るのであろう。
しかし、資本主義の本質はカネを稼ぐ才覚のある者が、才覚のない者を置き去りにしてどんどん先に進むという「置いてけ堀」経済である。従前からの構造的貧困を伴ったアフリカ的資本主義は貧富差の著しい、ある意味では最も資本主義らしい資本主義―ハイパー資本主義―となる可能性が高い。
それに対する民衆の反抗は、資本主義的市場原理にとって桎梏となるアフリカ的多様性と共同性とを武器として、世界の他の地域以上に強いものとなるだろう。
いずれにせよ、資本主義は一巡して地球を覆い尽くし、いよいよ爛熟期に入る。それはまた同時に、資本主義の終わりの始まりを画するであろう。