ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

イラン式「民主主義」

2013-06-16 | 時評

欧米や日本では反民主的な「イスラーム原理主義体制」という見方をされるイランだが、主敵アメリカと同様、4年ごと三選禁止ルールのもとに行われる大統領選は意外に「民主的」である。

今年の大統領選では保守派現職の後継候補を破って穏健派が勝利したように、近年は保守派と穏健派がほぼ交互に当選しており、これもアメリカと同様に、ある種の二大党派政治の流れができつつある。

ブルジョワ政治学の教科書どおりの「野党」は存在しないが、時に非合法の大規模デモの形で表出される民衆パワーが対抗権力的に機能し、大統領選にも潜勢的な影響を及ぼしている。

神権政治の枠内で、ある種の民主主義―神権民主主義?―が機能し始めているとも言える。現在のイランは民衆革命の性質を持つ1979年革命によって形成された体制だけに、元来民主的な要素は認められるのである。

少なくとも、同じように「原理主義的」な体制である中東随一の親米国サウジアラビアよりは民主的である。「イスラーム主義は民主主義と両立しない」という欧米にありがちな政治的偏見は、イランには当てはまらない。

もちろん立候補者の思想・信条にまで及ぶ事前審査や、厳しい言論統制も付随する未分化な括弧付きの「民主主義」ではあるが、ステレオタイプの見方を排除してイラン式「民主主義」の今後を注視していく意義はあるだろう。

コメント