自民党総裁任期が、三年二期から三期まで延長されるという。二年二期の時代も長かったことを考えれば、総裁任期の大幅な延長である。明確な根拠があってのことなら一政党の内部問題であるが、今般の党則改訂は、どう見ても安倍首相の在任期間を憲政史上最長期化するためのお手盛りの観が濃厚である。
誠実な党則改正なら、次期総裁からの適用となるはずのところ、すでに二期目の現総裁に遡及適用して、安倍首相の在任を九年にまで一挙延長との思惑が見え透いている。口実として、日本と同様に議院内閣制を採る外国の例が持ち出されているが、むしろここで参照すべきは海外の独裁体制の事例だろう。
今回、首相自らは沈黙を保ち、周辺から任期延長論を提起させ、あっという間に実現させてしまった。このようなお手盛り手法での執権任期延長は、しばしば独裁化の手段として海外でも駆使されてきた政略である。最近では、固辞のポーズを取りながら、延長に延長を重ねて25年以上大統領の座にあるカザフスタンのナザルバエフ大統領が知られる。
今、自民党がかつての中道保守的な包括政党からファッショ的な性向を秘めた一極的な反動右派政党へと変貌してきている中での総裁任期延長である。当初取り沙汰されていた任期制限撤廃は当面退けられた模様だが、三期目が満了する頃に改めて任期制限撤廃、安倍無期限総裁=総理が誕生する可能性も完全には否定できない。
その点、かつてポルトガルで首相の座にとどまったままファシスト独裁政権をほぼ終身間40年近く維持したサラザールも想起すべき先例となる。それにしても、どういうわけか、今般のお手盛り総裁任期延長を批判的に論評する向きは少ない。そういう言論鈍化もまたファッショ独裁化の危険兆候と見なければならない。