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「地球第一党」で対抗

2017-03-01 | 時評

ついに日本でも排外主義政党の誕生である。報道によると、先月26日、「ジャパン・ファースト(日本第一主義)」を掲げ、日本の国益・日本人の権利護持を呼号、在日コリアンら旧植民地出身者とその子孫の特別永住資格の廃止、移民受け入れ阻止、外国人への生活保護廃止などの政策を打ち出す新党・日本第一党が発足した。

海の向こうでは、一足先にトランプ政権が「アメリカ・ファースト」を連呼している。トランプ政権は形の上ではアメリカにおける伝統的な保守政党である共和党ベースの政権であるが、その主流派からも逸脱している政権は実質上「米国第一党」政権と呼ぶべきものと言える。

その他、欧州でも「自国第一主義」を掲げる政党は近年、モードとなっている。いずれも主張は似通っており、人種差別的な排外主義と偏狭な自国(民)優先主義である。ロシアのプーチン大統領の翼賛的政党「統一ロシア」も、実質は「ロシア第一党」の性格が強い。

近年の中国もかつての非同盟国際連帯を離れ、自国の「核心的利益」を追求する姿勢が強い点では、対外的には「中国共産党」ならぬ「中国第一党」体制に移行してきていると言ってよいだろうし、事実上の鎖国体制下で核開発に驀進する「主体主義」の朝鮮もまた然りである。こうした反米日的「自国第一主義」がまた、米日の「自国第一主義」を反転刺激する契機ともなっている。

このままいくと、これら主義の唱導者らが望むとおり、世界の主要国で「自国第一党」政権のオンパレードとなるのかもしれない。しかし、その行き着く先は? 「自国第一」ではそもそも外交は成り立たず、最終的に戦争で決着となるだろう。実際、トランプ政権は史上最大級の軍事費増大をぶち上げている。他の同類たちも例外なく軍備増強論である。

「自国第一」の最終極点は第三次世界大戦である。懲りない三度目の世界戦争となれば、今度こそ破局的な核戦争であろう。人類滅亡も映画の中の話ではなくなる。もちろん、「自国第一党」の幹部連は「御身第一」でVIP専用核シェルターに逃げ込み、生き延びる算段であろうから、幹部連とその子孫だけが生き延び、最終決戦に臨む。最後はその中の一強の子孫だけが生き残る。ただし、ほぼ自給自足で生きる絶滅危惧種の人類としてであるが。

映画的なシナリオを描くとすれば、「自国第一主義」の末路はこんな様子であろう。だが、希望がなくはない。「米国第一党」政権は、多くの米国民によって抗議され、反対されている。次の選挙でトランプが再選するかどうかは不透明である。一方、報道によれば、日本第一党の党員数は結党時点で約1600人、結党大会出席者は約270人という。初物にしては多いと見るか、少ないと見るか、いずれにせよ、大ブームとは言えまい。

こうした「自国第一党」の蠕動に対しては、ネガティブな批判にとどまらない「地球第一党」で対抗したい。批判する側も中途半端な形で「国益」とか「国境」といった概念を弄んでいては、勇ましくも単純な「自国第一党」に本質的に対抗することはできない。国家というそれ自体排他的な国民収容所制度を思想的に超克し、地球を束ねる世界共同体を構想する必要がある。

一方で、国境を越えた地球規模での金儲けに邁進する「グローバル資本主義」(グローバリゼーション)を運命として受容することも、反グローバル化運動を反転刺激し、「自国第一主義」というガスを発生させる要因となる。今世紀初め頃に盛んだった左派色の強い反グローバル化運動が退潮したのと入れ替わる形で現今の「自国第一主義」潮流に取って代わったことは必然である。

なお、「地球第一党」はそのような政党を実際に結党するという趣意ではない。「自国第一主義」潮流に対する一つの対抗視座の提示である。それは政党のようなそれ自体偏狭な徒党を組むことによってはとうてい実践することのできない包摂的視野を要する思考枠組みと言ってよいものだからである。

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