大統領の選挙
【第86条】
1 国民議会は、その選挙後最初の会期において、及び欠員を満たす必要があるときはいつでも、その議員の中から1名の女性または男性を大統領に選出しなければならない。
2 首席裁判官は、大統領の選挙を主宰し、または他の裁判官にそれを指示しなければならない。附則第3条A部に掲げられた手続き[訳出者注:公選公務員の選挙に関する共通規定]は、大統領の選挙に適用される。
[第2項は2001年第6次憲法修正法第6条により改正]
3 大統領職の空席を満たす選挙は、首席裁判官によって決められた日時に実施されなければならない。ただし、それは空席が生じてから30日を超えない日時とする。
[第3項は2001年第6次憲法修正法第6条により改正]
大統領は国民議会議員の中から選挙されることとされ、議会中心主義が徹底されている。このような議会内選挙を原則として首席裁判官が主宰するのは、国民議会議長選挙と同様である。
大統領への就任
【第87条】
大統領に選出されたときは、議員は国民議会の議席を離れ、5日以内に、附則第2条に従い、共和国への忠誠及び及び憲法への服従を宣誓し、または誓約したうえで大統領に就任しなければならない。
大統領に選出された議員が議員の地位を失う点では議院内閣制下の首相とは異なり、立法と行政が分離された大統領制の枠組みである。
大統領の任期
【第88条】
1 大統領の任期は就任により開始し、空席または次期大統領の就任により終了する。
2 何人も、二期を超えて大統領職を保持することはできない。ただし、空席を満たすために選出された場合は、当該選挙と次期大統領選挙の間の期間は任期とはみなされない。
大統領の罷免
【第89条】
1 国民議会は、以下の各理由に基づいてのみ、その3分の2以上が賛成する議決によって、大統領を罷免することができる。
(a)憲法または法への重大な違反
(b)重大な非行
(c)職務遂行上の無能
2 第1項a号またはb号の定めるところにより大統領を罷免された者は、大統領職に伴ういかなる利益をも享受してはならず、かついかなる公職を務めることもできない。
大統領は三選禁止制を採り、かつ国民議会は一定の場合に大統領を罷免することができる。罷免事由はややあいまいではあるが、重大な法令違反や非行を理由として罷免された場合は、大統領職に伴う利益もその他の公職に就く権利も失うという厳しい制裁を受ける。
大統領代行
【第90条】
1 大統領が共和国に不在であるとき、もしくは他の理由で大統領としての職務を果たせないとき、または大統領職が空席の間は、以下の職にある者が大統領を代行する。
(a)副大統領
(b)大統領によって指名された大臣
(c)他の閣僚によって指名された大臣
(d)国民議会が他の議員を指名するまでは、議長
2 大統領代行は、大統領としての責任、権限及び職務を有する。
3 大統領代行は、大統領としての責任、権限及び職務を果たす前に、附則第2条に従い、共和国への忠誠及び憲法への服従を宣誓し、または誓約しなければならない。
4 すでに大統領代行として共和国への忠誠を宣誓し、または誓約した人は、次期大統領に選出された人が就任する時に終了する大統領代行としての続任期のために宣誓または誓約の手続きを繰り返す必要はない。
[第4項は1997年第1次憲法修正法第1条により置換]
大統領代行者の順位や権限等を指示した規定である。副大統領等の自動昇格ではなく、あくまでも代行職である。